共働きだからお受験に不利な時代は、終わった
以前、小学校受験に共働きは不利と言われていた。家で子どもを見ていられる専業主婦家庭のほうがよしとされ、働いていることを隠して受験したワーママも少なからずいたらしい。
しかし、最近では「働くお母さんを応援します」と大きくうたう学校も出始め、アフタースクール(学童)がついていることが人気につながる要素になってきているほど、私立小学校も変わり始めている。
「私立小学校だって、人を集め、運営をしていかなければいけないビジネス。しかも、人気が落ちて定員割れすれば、学校のレベルも下がります。私立小学校に入れられる経済的ゆとりを持っているうえに、親の教育水準も高く、子どもの教育に熱心なのは、今や多くは共働きの家庭なんです。ですから、学校側も共働きだからNGとはもう表立って言えない時代ですし、実際に新渡戸文化のように共働き応援を全面に出して、人気がうなぎ登りの学校もあります」
と言うのは、長い歴史を持つある幼児教室のベテラン教師。首都圏では、小学校受験者が増え続けている背景には、そうした共働き家庭の選択肢にお受験が入ってきていることがあるそうだ。
一方で、なぜ私立小学校がこれまで共働きを嫌う傾向にあったのかも念頭に入れておいたほうがいいかもしれない。学校側に、お母さんが働いている、イコール、子育てがおろそかになっているというイメージがあったのは否めない。だからこそアピールしたいのは、限られた時間であっても子どもに関わってきたということだ。
「大事なのは、働いていることを言い訳にしないことです。罪悪感を感じて縮こまるのではなく、親がイキイキ働いていれば子どももそんな親を誇らしく思うはずです。働いていない親より時間はとれないかもしれません。しかし時間を無駄にせず有意義に使うことこそ、働いている人が得意とすることではないでしょうか」
と幼児教室を運営するジャック幼児教育研究所の理事、大岡史直さん。
実際に、娘を私立小学校に通わせている坂根さん(仮名)は、受験の面接でもいくつかの学校で仕事について聞かれたという。
「願書には、通学中の保育園や幼稚園の名前を書きますので、保育園と書いてあればもちろん母親が働いていることは分かります。最初に聞かれたのは、夫が毎日何時ごろに帰ってくるのか、一緒に夕飯は食べるのか、週末は子どもと何をして遊ぶのか、といったような夫の育児参加です。
その後、学校によっては『お母様は働いているようですが、何時ごろに帰りますか?』『お子さんは何時ごろに寝ますか?』といったような質問がありました。私はあえて隠すことはせず、仕事をしていても毎日なるべく同じ時間に迎えに行って、夕飯を一緒に食べて、夜はできるだけ9時までにはベッドに入れる規則正しい生活をさせている、といったようなことを答えました。大事なのは、働いていても“子どものことを考え努力しています”という姿勢がきちんと伝わることですよね」
坂根さんが話すように、共働きだからこそ量より質で取り組む子育て、そして夫婦協力しての子育てに取り組んでいることなどもアピールできるだろう。さらに、教育や時代の変化などに対する情報感度の良さや、タイムマネジメントのスキルも働いてきたことで磨かれている面も生かせるはず。学校側もそうしたことに理解が広がりつつある今、共働きはもう隠すよりもアピールできるポイントになりつつあるのかもしれない。