子どもたちが小さかったころは、夏休みといえば海や山へ行くのが当たり前だったけれど、いつのころから、一人旅で、なかなか会えない遠方の友達に会いに行くようになった。「あいつ」に会いたいとふと思うのだ。今回は、そんなあいつを息子たちに紹介したいと思った。ユニークで素晴らしい「男の世界」を持つ、あいつに。
 そう話す父・小栗雅裕さんが息子たち(24歳、18歳)と会いに行ったのは……?

悪友は人生の宝だ

 今年のお盆は父さんの親友の一人に会いに行かないか? と振ってみた。

 「どういう友達? 会ったことがある人かな」
 「いや、初めてだけど、ドローンを作っている。いや、大企業じゃなく、そうだな、『下町ロケット』のおっさんみたいに」
 「おおー!」
 「それに、土蔵を改造したスタジオを持っている。ドラムもたたき放題だ」
 「うわぉ!」
 「料理も得意だし、広い庭でBBQなんてやってくれるかもよ」
 「いいね! 行こうじゃないの!」

 息子たちは人見知りしない性格ではあるけれど、あいつには会う前から興味津々となった。話しているうちに、これは面白いことになりそうだなと期待がどんどん膨らんできた。

 会えるときに会っておきたい、という思いも強いけれど、高校時代の友達とは何年離れていても、会った途端に当時の感覚に戻れることがうれしい。通った学校は詰め込みだけの進学校で、思い入れはまったくないけれど、友達は別だ。嫌いな学校で出会う友達といえば、悪友に決まっている。

 「良友とはためになる友達、益友。反対は悪友」と辞書にはあるが、絶対に違うだろうと思う。悪友のほうが人生を豊かにしてくれる。今の自分があるのも、そんな悪友たちに恵まれたおかげだ

話に花が咲くオヤジさんたちの背後に見えてきた姿は……(イラスト/小栗千隼)
話に花が咲くオヤジさんたちの背後に見えてきた姿は……(イラスト/小栗千隼)