「テレワークさえ導入すれば働き方改革だ」という勘違い

塚越 やみくもに一律に「週に何回までテレワークOK」と導入するのは危ないと思います。テレワークは、自律性や裁量性を今よりも与えることになるので、それを与えてもよいのか、一人ひとりを見て判断して導入すべきでしょう。

 そういう意味では、育児や介護などの理由があるからといって、一律にテレワークの権利を与えるのも疑問です。反対に、育児や介護という理由がなくても、ちゃんとやれる人はテレワークで生産性を上げられるのですから導入したらよいわけです。

 テレワークの動きが世の中に急速に広がっているので、「テレワークさえやれば働き方改革だ」と勘違いされていることも多いです。一人で完結する仕事であればテレワークのほうがはかどる一方で、複数の人と関連性を持って行う仕事や問題解決など複雑性がますほどフェース・トゥ・フェースで行ったほうが生産性が高いことは様々な海外の研究からも分かっています。その仕事を最も生産性高くこなせるのは、会社なのか、カフェなのか、自宅なのか。選択肢が複数ある中から最良を選択できることが大切です。テレワークが生産性の向上につながっているのか、検証は欠かせないと思います。

進んでいる企業はすべてを“ひっくり返し”始めている

―― 思い切って、働き方を大きく変えようという企業は増えていますか。

塚越 多様な働き方を実現させるためにどうあるべきか、先入観なしにシンプルに考えられる人が企画する人事部にいて、社長をはじめとする経営陣に理解と決断力がある場合、その企業の取り組みは一気に加速しますよね。特に今は国の働き方改革の後押しもありますし、すべてがうまくはまった企業は高速で動き出しています。

 本気で働き方を変えようと思ったら、長期的な視野で根底から制度をひっくり返す必要があるのです。

 例えば、ダイバーシティー推進とか言っている割に、給与テーブルには年齢給が強く残っていたり、手当なども例外ではありません。長年働いて、もう慣れてしまったかもしれませんが、入社して間もないころなどに、なぜこんな手当が存在するんだろうと、疑問に思ったことは、皆さんも一度や二度はあるのではないかと思います。

 日本企業は、昭和の日本的人事制度を時代に合わせてマイナーチェンジしながらここまで来ました。「ダイバーシティー」とは正反対の「均質性」を重視しながらこれまで来たのですから、各種手当や給与体系なども突き詰めてみると、専業主婦世帯を念頭に置いた昭和の文化的背景に行き着くということも多いわけです。「多様な人材が最大のパフォーマンスを上げ、報われるにはどうすればいいか」と本気で考えている先進的企業では、手当なども見直しの議論の俎上に載せ、不要だと分かれば廃止し、ベースアップや賞与に反映してシンプルに再構築しています。進んでいる企業では既に始まっていますので、追随する企業もこれから増えていくでしょう。

―― ありがとうございました。第3回は、育休後コンサルタント・山口理栄さんにお話を伺います。

【調査への参加申し込みはこちら!】
調査へのエントリーをご希望の企業のご担当者は、下記のフォーマットに必要項目をご入力ください。日経DUAL編集部から、順次、調査表をメールでお送り致します。
調査表をご返送いただく締切日は、10月2日(月)です。
皆さまからのご応募を心よりお待ちしております。
https://aida.nikkeibp.co.jp/Q/C028909RA.html

(取材・文/小林浩子、イメージ画像/iStock)