法律が変わって「何かしなくては」と動き出す企業は増えた
日経DUAL編集部(以下、――) 昨年は、初代グランプリ企業となったサントリーの「育休取得後のフルモード化」、特別奨励賞の丸井グループの「男性育休取得率を上げる取り組み」、同じくダイキン工業の「3種類の在宅勤務」などが目立ったキーワードとなりました。今年も引き続き、「共働き子育てしやすい企業ランキング」のアドバイザーを務めていただきますが、ここ最近で感じられていることはありますか。
塚越さん(以下、敬称略) あくまでも肌感覚ではありますが、「何かしなくては」と動き出している企業は確実に増えていると思います。やはり「女性活躍推進法」(以下、女活法)の存在は大きいですね。それまでは昭和的な考え方でなんとかやってきたという企業も、女活法のために自社の行動計画を出してしまったので、計画と実態とのギャップを意識せざるを得なくなった。そのギャップを埋めるために何かしなくてはいけない。
そのため、「何かやりたいのですが、何からやればいいのでしょうか?」と問い合わせてくる企業が増えています。歴史的に見てもそうですが、やはり日本では、法律が変わって大企業が動き、それに連動して中小企業が動く、という流れがあります。企業は規制の影響を大きく受けますから。
“近道”として「イクボスセミナー」を導入する企業が増加
―― 塚越さんは、NPO法人ファザーリング・ジャパン理事でもあり、「イクボスプロジェクト」を推進し、イクボスセミナーも数多く手がけていますね。
塚越 私に来るセミナー依頼のうち、7割ぐらいがイクボス関連です。去年ぐらいまでは、イクボスセミナーを導入する企業は、ダイバーシティーや両立支援などのテーマに関心の高い先進的企業が多かったのですが、去年から今年にかけては、これまであまりそのようなテーマに取り組んでこなかった、女性社員の比率が低い企業などからの依頼も増えています。
「女性活躍のために何かしなくては」と考えて、イクボスのテーマから取り組み始める企業は多いです。イクボスとは、部下のワーク・ライフ・バランスを考え、社員一人ひとりのキャリアと人生を応援しながら、組織の業績も結果を出しつつ、自らも仕事と私生活を楽しむことができる上司のこと。イクボスが支援するのは女性だけではありません。女性の活躍はもちろん、介護や男性の育児参加、LGBTなどの課題解決は、言ってみればリーダー次第です。そのため、企業は「上司をイクボスに変えればすべてがなんとかなりそうだ」と考え、その近道として「イクボスの育成」というテーマが浮上します。最近、こういった課題に取り組み始めた企業でも比較的早く追いつきやすいテーマというイメージがあるのか、イクボスセミナーを導入する企業は増えています。