妻に問い詰められて、テヘッと笑いながら事実を告白したという。知人は精神のバランスを崩した。「彼は私とその女性の身体のどちらにも値段をつけたのだ。人はお金で買えないのに」と言って泣いた。夫が自分以外の女性と関係を持ったこと以上に、セックスをそういうものとして扱ったことに絶望したのだ。

 過酷な家庭で育ち、結婚してようやく幸せになれたと喜んでいた彼女が壊れるのを見るのは辛かった。自分の欲望と向き合えず、語る言葉を持たず、「男の欲望は理性ではどうにもならない。愛情とは別物」という卑怯な言い訳を使って、妻とコンドームなしの劣悪な環境で働く女性の尊厳をないがしろにした男の弱さが許せなかった。知人は2人の子どもの母親となったのちにPTSDを発症し、今も通院している。

息子たちに、性は命そのものであるのだと知ってほしい

 私は息子たちに、その話をした。君たちは、自分の欲望と格闘しなさい。語る言葉を持ちなさい。パートナーに尋ね、対話する勇気を持ちなさい。性は命そのものでもあるのだと知ってほしい。例え相手が売っても構わないと言っても、人の体をお金で買ってはならないのだと。

 セックスレスって本当はきっと、そういう根深いテーマをはらんでいるのだ。男女ともに、まずは自分の欲望を語る言葉を持つこと。生理的な仕組みを正しく知ること。自分が性的な存在であることを認めて、性がなんであるかを考えてみること。それをパートナーに話し、パートナーの欲望を知ろうとすること。NOは NOと言うこと。セックスの要求が食い違ったときに解決の方法を一緒に探ろうと努力すること。それはきっと夫婦の信頼関係を、単に性的な面だけではなく、深く豊かなものにしてくれるはずだ。そして、我が子に性をどのように語るべきかもわかるだろう。

 ぷよぷよ仮説から、思いがけず長い話になった。セックスは大事だ。することが大事なんじゃなくて、セックスってなんだろう? という問いを持つことが大事なのだと思う。ではみなさま、実りある夫婦の語らいを!