料理も人も、「多様であること」を子どもに伝えておきたい

「我が家では、ご飯のメニューを決めるとき『何食べたい?』と子どもに聞きません」

 そう語る行正さん。なぜかというと、「何が食べたい?」と聞くと、子どもたちはカレーやラーメンなど「自分が知っているメニュー」からしか答えが返せないからだとか。

「子どもたちには、食べものにも人にも、多様性があることを知ってほしいと思っています。将来、世界に出ていくうえで、どちらも必要なことだから。多様性を教えてあげるのは、親の大事な役目だと思っています」(行正さん)

 だから行正家のお嬢さんたちは、「出されたものはなんでも食べる」とのこと。「小さい頃から、野菜でも奈良漬でも、出したら食べる。もし食べなくても『他のものをあげようか』ということは絶対にしませんでした」(行正さん)というから、徹底してます。

「子どもが大きくなるまでに教えたいことはいっぱいあります。食事の時間を大切にするために、実は塾も辞めさせてしまいました。塾で遅くなってご飯がおろそかになってしまうことにメリットを感じなかったんです」(行正さん)

 確かに、最近の子どもは塾や習い事に忙しく、「暇な時間」があまりないような印象を受けます。行正さんはこの「暇な時間」こそが大切だと考えています。

暇があれば、何かしようと自分で工夫したり、創作したりすることができる。こうした時間って、とても大切だと思うんです。例えば、やる気を出すためのきっかけを考える時間があることで、自分で気づくことがありますよね。私自身、母から『勉強しなさい』という類のことを一切、言われたことがありません。放っておいてくれたことで、自分で将来のことを考えることができたのだと思います」(行正さん)

 お嬢さんたちに、「これからは3足のわらじを履かないといけない」と伝えてるという行正さん。そのココロは「英語とITは最低限必要なスキルで、これに“プラスアルファ”して、自分のやりたいことをするためのスキルが必要になると考えています。だからと言って習いごとをいっぱいやる、というのではなく、家で自分でできることを工夫させ、時間を決めて取り組む。それ以外の時間は自由にさせています。娘たちには多様性を与えながらも、あるとき自分自身でどうしたいかに気づくときが来るといいなと願っています」(行正さん)。

取材・文/岩辺みどり

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