セックスレス、という言葉がすっかり定着し、その状態にある夫婦は珍しくなくなりました。それどころか、下手をするとセックスレスの夫婦のほうが多い、といった傾向も出てきています。

 一方、セックスレスでも仲良しという夫婦や、セックスはしないけれどもスキンシップはよくするという人もいます。共働き家庭が増え、夫婦の役割やその在り方も多様化が進み、「かくあるべき」という伝統的な夫婦像が崩れつつあるようです。

 夫婦にとってセックスとは、どうしても必要なものなのでしょうか? 今回日経DUALでは、夫婦のセックスレスとスキンシップの在り方について徹底的に取材しました。最終回は、レズビアンのジョンさんとゲイのマキさんという逆転夫婦のインタビュー後編です。現在のお二人のリアルな結婚生活からセックスレス問題、そして子どもについても思いのたけを伺いました。

【“仲良しセックスレス”はアリ? 夫婦のスキンシップ特集】

第1回 “夜の営み”アンケート「セックスは好きですか?」
第2回 男女の性欲は加齢により変化 妻の本音と女性の体
第3回 妻としたい気持ちと折れる心 夫の自尊心と男の本能
第4回 閲覧注意! セックスの悩みに答える「直球Q&A」
第5回 マンネリ夫婦の関係改善 スキンシップ&歩み寄り術
第6回 ゲイとレズビアンの逆転夫婦「ノンセックスでも絆」
第7回 「でも、子どもは欲しかった」結婚23年目の初告白 ←今回はココ!

ノンセックスどころかスキンシップレスの二人

十数年前のマキさん
十数年前のマキさん

 ゲイとレズビアンの逆転夫婦として、まだ性同一性障害やLGBTという言葉もなかった1994年に結婚したジョン&マキさん。

 学生時代から早大生ゲイボーイとしてバラエティー番組に出演していたマキさんは、テレビで結婚を発表。「男女逆転・ノンセックス」の友情結婚が話題となり、ワイドショーや週刊誌、TVドキュメンタリー番組で取り上げられるようになった。

 実生活では、二人で経営していたニューハーフショーパブを閉めた後、前橋に部屋を借りながら、それぞれ出稼ぎに出る別居生活となる。

 マキさんは、古巣の六本木「プティ・シャトー」や新宿二丁目の店での勤務などを経て、一度水商売から離れることに。様々な資格を取り、OL(?)や人材派遣会社などを転々とし、現在は、またショービジネスの世界に復帰。トークショーやイベントなどにも出演している。ジョンさんは、ホテル勤務経験や料理の腕を生かし、飲食店などに勤務していたが、独学で介護福祉士の資格を取り、現在は介護の仕事に就いている。

 結婚当初は同じマンションの隣同士で別居生活をしていたが、現在は引っ越して、家賃の問題もあって同居している。ただし、寝室は別々だ。

 結婚した際には「ノンセックス、同性との恋愛は自由、すべてオープンにする」という3つの誓いを立てたが、日常生活でスキンシップはあるのだろうか。

 「マキちゃんは、何かおめでたいことがあったり喜ばしいことがあったりすると、すぐハグしたがるんです。それが私は嫌ですね。気持ち悪い(笑)」(ジョンさん)

 「失礼ね! だってオカマ同士でも友達と久しぶりに会ったりしたら、ハグくらいするじゃない。私たち身内なんだから、それくらい普通でしょって思うんだけど。何カ月も出稼ぎに行って、帰ったときくらい『ただいまー』ってハグくらいしたいわ。だけど、ジョンはイヤだって」(マキさん)

 ハグもキスもダメ。では握手程度なら?

 「握手なら大丈夫。でも、スキンシップの許容度は私たちの間でもズレがありますね」(ジョンさん)

 「でも、私がけがとかして体が不自由なときとか、お風呂で背中を流してくれたりするじゃない。あんたは服着たままだけど」(マキさん)

 「用心してるからね。間違って襲われたら困る(笑)」(ジョンさん)

 「やめてよ、ほんと失礼よね。なんで私があんたみたいなおばあちゃん襲うのよ!」(マキさん)

 セックスどころか基本的にはスキンシップもない関係。それでもお互い相手のことが好きだとはっきり言い切り、誰よりも強い情を抱き合っている。

≪次ページからの内容≫
・ゲイとレズビアンのリアルな恋愛事情
・「抱かれてないと、色気って出ないわよね」
・「私は子どもを産みたかった」
・セックスレスはある意味、進化したから?
・もし今の時代に若かったら…