親が守れない状況でも子ども自身が自分の身を守り、生き延びるために携帯させたいもの、その理由をお伝えした前々回、災害後にどんな備えがあれば子どもの命を守り抜くことができるのかをお伝えした前回に続き、今回は災害時のトイレ問題についてお伝えします。

 内閣府でもトイレの確保と管理に関して指針を示す「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」(2016年4月)を公表しており、その冒頭で「被災者支援の中で、避難生活におけるトイレの課題は、今まで以上に強い問題意識をもって捉えられるべきである」と明記しています。トイレ問題は、生死を分けるといっても過言ではない大きな問題なのです。

 1995年の阪神・淡路大震災の被災者であり、自らの経験に基づいた防災術を発信している料理研究家の坂本廣子さん・坂本佳奈さんに伺いました。

(上)2歳児から豆・水・マスク携帯! 防災の新常識
(中)子どもを守り抜くガスボンベ・ポリ袋・煎り豆・茶葉
(下)災害用トイレ なぜ自分で用意する必要があるのか ←今回はココ!

被災時のトイレ問題は、子どもの生死を分ける問題

 被災時に水道が止まることで、飲料水不足と同じくらい困るのがトイレ処理です。「いざというときのトイレ用に、いつもお風呂の水をためている」という方もいると思いますが、これはやめてください

 災害時には、目に見えない場所で下水道の破損が起こります。破損した下水道に汚水を流すと破損した下水道から漏れ出た下水で、地域全体が汚染されてしまいます。“地域に大きな健康被害をもたらす”ということは、“わが子の感染症リスクが高まる”ことなのです。病院が機能していないときの小さな子どもの感染症は、命に関わります。

 また、トイレを共同で使わざるを得ない場合、不潔さからトイレに行くのを我慢して、体調を崩すこともあります。小さな子どもやお年寄りの場合、そうした衰弱が続くのは非常に危険です。ストレスで免疫が落ちているときは、ニキビがきっかけで危険な状態になる場合だってあります。まさに「トイレの問題は命の問題」なのです。

 とはいえ、トイレ対策は難しいことではありません。要は自然の排泄を、衛生的に簡単に処理できればいいのです。

身近なものを使って三分別するだけで、トイレ問題はあっという間に解決!

 私はずっと以前から、ポリ袋と新聞紙、ペットボトルを利用して液体・固体・紙と3つに分別し、衛生上の心配のないところに置いて、後から個別に回収する「三分別トイレ」を提唱してきました。最小限の手間で簡単に排泄物を処理でき、最小限の量で安全に保管できるのが「三分別法」です。

 出たばかりの尿はほぼ清潔で、より菌が多いのが便です。この2つを混ぜることによりよくない発酵が始まり、悪臭も発生します。でも2つをきちんと分別すれば、不潔になることもなく悪臭も起こりません。

三分別法のやり方

(出典:『くらしの防災』メタモル出版)
(出典:『くらしの防災』メタモル出版)

 上記の「三分別法」のうち、尿はペットボトルの上の部分をカットしてボトル部分にビニール袋をかぶせ、上部をじょうごの形にして、尿を取ります。取り終わったらじょうごの部分は、ペットボトルシャワー(※詳しくは後述します)で洗い流してから袋を閉じます。

 便は下図のように新聞紙を箱形に折ったものを使用してポリ袋へ入れます。

(出典:『くらしの防災』メタモル出版)
(出典:『くらしの防災』メタモル出版)

 なお、どちらも口を結んでポリ袋に入れます。

 また汚れた紙は空気に触れないよう、ポリ袋に入れ両端を折り畳み捨ててください。