350ccの水で乳児に行水をさせ、皮膚の清潔を保つ方法

 乳児はよく乳児湿疹を起こすものです。子どもに湿疹ができたときに、拭くのは厳禁。摩擦の刺激でさらに悪化させてしまいます。必ず清潔なお湯で、洗い流してください。

 でも被災時、バケツもおけもない、もちろん水道が止まっている。そんなときにいくらなんでも行水は無理なのでは? と思う方も多いでしょう。今回提案する方法なら、350ccの水があれば、乳児の全身を清潔に洗い流すことができます

 準備するのは、ペットボトルと押しピン、そしてペットシーツです。フタに押しピンで5、6個穴を開け(放射状に均等に開けるのがコツ)ぬるま湯を入れてフタをします。

(出典:『くらしの防災』メタモル出版)
(出典:『くらしの防災』メタモル出版)

 乳児をペットシーツの上に寝かせ、上からシャワーのようにぬるま湯をかけましょう。この方法なら、350ccの水があれば、子どもの全身をきれいに洗えます。ペットシーツは1リットルまで保水できますから、1枚のペットシーツで2~3人は行水できるのです。

 この「ペットシーツ行水」なら、ペットシーツを広げる場所さえあれば、デスクの上でだって子どもを行水させられます。被災時だけでなく、長距離ドライブでお風呂に入れられないときなどにも便利。ともかくペットシーツは非常に汎用性が高いので、避難袋にはぜひ入れておきましょう。

 ちなみにこのペットボトルシャワーがあれば、大人でも500mlで全身の汗を流せますし、トイレの後や食事の前、ごく少量の水で手を洗って清潔を保つこともできます。

「知っている」ことが力になる

 ポリ袋、新聞紙、ペットボトルなどは、どの家庭にも必ずあるものです。でも多くの方が、こうした方法があることをご存じないために、被災すると必ず、トイレ問題や子どものお風呂問題で悩まれるのです。私はそれが残念で仕方がありません。

 災害とはもともと、理不尽なもの。でも「今、自分のできることはみんなした」と思うことができれば、災害の理不尽さにも何とか折り合いをつけることもできるのです。

 特に子どもの場合は被災時、ほんの小さなことをしてあげられたかどうかが、命を左右することが少なくありません。どうぞ、この3回でお伝えした「子どもの命を助けるすべ」を記憶にとどめ、生活に取り入れてみてください。

(取材・文/桑原恵美子)