「調理」のためでなく「汚染から子どもの命を守る」ための熱源

 ライフラインのうち、水道が使えなくなると調理をするどころか“洗う”ことができなくなります。この洗う水がないときに一番怖いのが、口から入るものが不潔で食中毒を起こすことです。食中毒は平時でも子どもにとって危険ですが、病院が機能しない被災時には、命取りになることも。普段は衛生的なものも、ライフラインが崩壊していると、どんな危険が潜んでいるか分かりません。大げさな話ではなく、「子どもが触れるものにはすべてに菌がある」と疑ってかかるべきなのです。

 食中毒防止の3原則はばい菌を「つけない」「増やさない」「やっつける」です。

【ばい菌を「つけない」ために】

・ばい菌が一番ついている素手で食材を触らないこと。
まな板は使わず、熱湯をかけ消毒したピーラーやスライサーなどを使用すること。

【ばい菌を「増やさない」ために】

・調理してから時間をおかずに食べ切ること。食料が少ないときでも「もったいない」と残り物をとっておかない
・今の冷蔵庫は保冷力が優れており電気が止まっても扉を開閉しなければ冷蔵機能はある程度は保たれるので、電気が止まってすぐに冷蔵庫から食品をすべて取り出す必要はない。使うものだけを手早く取り出し、新聞紙でくるんで発泡スチロールの箱などに一時保管をするといい。そのときに、冷凍しているものを一緒に入れると保冷剤代わりになる。

【ばい菌を「やっつける」ために】

・普段は清潔な環境が当たり前でも、「被災時はあらゆるものがばい菌に汚染されている」と考える。
・消毒薬やアルコールなどの除菌方法もあるが、一番簡単で確実な煮沸を活用する。大きな鍋を準備しておき、時間をかけて煮沸するとよい。

 例えば水道水も、被災時は途中で水道管が破損していることが多く、どんな菌が混入しているか分かりません。ですから、水道水をそのまま子どもに飲ませるのは厳禁。安全が確認できるまで、子どもだけでも必ずペットボトルの水を飲ませるようにしてください。そのために、日ごろからあらゆる場所に水を保管しておくようにするといいでしょう。

 善意の人たちによる炊き出しのおにぎりも、素手で握ったものは危険と考えてください。未開封のコンビニなどのお菓子やおにぎりは、まだ安全だと考えていいでしょう。水もおにぎりも食器も、口に触れるものはすべて煮沸消毒を徹底させるようにしましょう。

 コンビニのもの以外のおにぎりを食べる場合には、ビニール袋に入れてほぐし、ビニール袋ごと煮沸することをおすすめします。ほぐしたおにぎりに卵を混ぜて、ビニール袋の端をカットしてフライパンに入れ、いためれば、炒飯になります。

 また調理のためでなく、煮沸消毒のために、カセットコンロやIHヒーター(電気が復活しても、電子レンジだけで煮沸用のお湯を沸かすのは大変)などの熱源の常備も必要です。

 食器や食材など、あらゆるものを煮沸消毒する必要があるので、直径30cm程度の大きな鍋を一つ持っていると、ガスボンベの節約になります。また小さな子どもを沐浴させて、清潔を保つこともできます(ふだんは中に小さな鍋などを入れておけば、それほど邪魔にはなりません)。