友人よりも肉親よりも深い二人の絆

 二人は、結婚する前からそれぞれ同性の恋人がいた。マキさんが長年付き合っていたのは、先ほども触れたジョンさんの友人の男性だった。

 「普通に恋人として付き合っていて、ジョンと結婚する前から『俺と結婚してくれ』って迫られていて。今は性転換とかもあるけど、(当時は)無理だからって断っていました。それで私もジョンと結婚することになったから、『あなたも他で探しなさい』って諭したのよ。そうしたら彼も彼女を作ったんだけど、私とも切れなくてね。まあアッチの相性がよかったのよね。ジョンと入籍した前の晩も、入籍した3日後にも会ってセックスしてた(笑)。

 彼もその後、彼女と結婚したんだけど、私と会っているのが見つかっちゃってね。下世話な話だけど、彼は奥さんとはあまりセックスしなかったのに、私とはしっかりしてたのよ。そのこともバレちゃって、もう大変。あれは修羅場だったわね。さすがにそれで私とも切れたけど、結局18年くらい付き合ったかな」(マキさん)

 ジョンさんもマキさんと出会う前から結婚後も続いていた女性の恋人がいた。お互い恋人が同性の場合は、嫉妬の感情は全くないとマキさんは言う。

 「だって二人とも全部オープンに話すからね。それぞれ恋人とお泊まりデートした翌日の晩酌時は『どうだったのよ?』って必ず聞くの(笑)。どんなセックスをしたとか、どんなおデートだったとかね。酒のさかなに根堀葉掘り聞くし『あたしのほうもすごかったのよ~』ってせきららに話す。ただし、それはあくまで同性の恋人ならね。お互い一回もないけど、もしジョンが男と、私が女とセックスしたら、それはもう不倫であり、完全な裏切り行為なのよ」(マキさん)

 一般的な視点で考えると歪とも言える関係だが、二人の間では成立するノンセックスの夫婦関係。その根底にあるのは“絆”だと二人は声をそろえる。

 「ジョンは面倒見がよくて、なんでもすぐあげちゃうから、だます目的で寄ってくる人がいるんだけど、それは絶対に許せない。もしジョンが悪い人にひっかかったら、それが身内だろうが誰だろうが、私は我が事のようにやり返すだろうし、逆に私に何かあればジョンが守ってくれる。私たちは友人を超えた、兄弟のような、もっと深いところでつながっている同志のような関係かな。私たちが提唱したことは、お互いレズビアンの男装とゲイの女装という趣味嗜好と性癖(※注)は認め合ったうえで、独身時代の自由さを失わない、新しい夫婦の形なんです」(マキさん)

 マキさんは結婚する際に、その特殊な夫婦関係を実践することをバラエティー番組で宣言。その後、ワイドショーや雑誌で取り沙汰され、注目を集めていくことになる(後編に続く)。

(取材・文/日経DUAL編集部、藤谷良介 撮影/江藤海彦)

このインタビュー記事の掲載当初、レズビアンを「レズ」と表現した箇所がありましたが、蔑称との誤解を受ける恐れがあるため、すべて「レズビアン」と修正させていただきました。(2017年9月7日)

性の多様性を考えるとき、「ジェンダー」(性自認、性別表現、性役割)と「セクシュアリティ」(性的指向)は分けて認識すべきものだと、読者の方より記事掲載当時からご指摘がありました。それをふまえて記事を検証しました結果、以下の不適切な表現や認識がありましたので、お詫びして訂正いたします。申し訳ございませんでした。(2018年5月23日)

■1ページ目「ジョンさんは女性として生まれた男装のレズビアン、マキさんは男性として生まれたニューハーフ。ともに同性愛者である」の中の「ともに同性愛者である」という記述は、出生時に割り当てられた性別(男性)と異なる性別(女性)に帰属する「トランスジェンダー女性」(※マキさんのように「ニューハーフ」と自称する人もいる)と同性愛者を混同するなどの誤解を招く表現であったため、削除しました。また、「ニューハーフ」という呼称は、マキさんご本人の言葉の引用であることを明らかにしました。

■1ページ目にありました「二人のインタビューに入る前に、まず日本における性同一性障害を含めた同性愛者の結婚の現状についてまとめた。」の中の「性同一性障害を含めた同性愛者」という記述は、トランスジェンダーと同性愛者を同じとする誤解を招く表現でした。以下の理由からも、この一文を削除しました。

■1ページ目にありました「性同一性障害者の結婚」の項目と、続く「LGBTのパートナーシップ法」の項目は、インタビューしたジョンさんとマキさんのケースには当てはまらず、誤解を招きかねない内容のため、削除しました。

なお、
・同項目内にあった「『性同一性障害』(=トランスジェンダー)」という記述は、医学的な診断を伴う精神疾患概念である「性同一性障害」とトランスジェンダーを「=」で結ぶことが適切ではありませんでした。
・同項目内にあった「2004年に戸籍上の性別を変更できる『性同一性障害特例法』が施行された。戸籍を変更するための条件は以下の通り。(中略)戸籍変更後は、事実上の同性婚が可能となる。」の中の「戸籍変更後は、事実上の同性婚が可能となる」という記述は、出生時に割り当てられた性別を基準にした表現であり、適切ではありませんでした。
・同項目内にあった「パートナーシップ法」の呼称について、自治体の取り組みであるため、「パートナーシップ制度」が適切な表現でした。
・同項目内にあった「2015年には、渋谷区から同性カップルに対し結婚に準ずる関係を認める『同性パートナーシップ制度』が始まり」の中の「結婚に準ずる」という記述は、結婚に準ずるとまで言えない実態があり、不適切な表現でした。

誤解を招きかねない箇所に、以下の注釈を追記しました。(2018年6月18日)
※注 「趣味嗜好と性癖」の表現はマキさんの発言に即しています。性的指向や性自認は当人の自由意志によって変えられるものではないとみなすことが適切と考えられます。