「肉体関係はなし」「同性の恋人は認める」という誓い

 1994年、ジョンさんの誕生日である10月27日に二人は入籍した。そのきっかけはなんだったのだろうか。

 「私がね、何かのときに冗談で言ったの。ジョンは戸籍女で、私は男なんだから、結婚できるわねって。そうしたらお互い老後寂しくないわよねって。そうしたら周りもそうしなよって応援してくれて」(マキさん)

 「私は、もともと自分の生き方として結婚は考えていませんでした。ずっと独身のままでいくと思っていたし、マキちゃんとお付き合いしても男と女という気持ちには全くならなかった。ただ、食事に行ったり飲みに行ったり、一緒に楽しく過ごした後に一人になると、寂寥感というか虚無感というか、寂しさは常にありました。でも、くどいけれどその寂しさは異性愛的なものとは違う。説明がしづらいものでしたね」(ジョンさん)

 マキさんは「家族が欲しかった」という。お互い人として親愛の情を抱いており、家族になることで心の隙間を埋める意味もあったのだろう。その一方で、現実的な側面も考えたとマキさんは話す。

 「私はゲイボーイをやっていた学生のころから考えていたんだけど、私たちのような同性愛者が結婚するとしたら、男同士も女同士も養子縁組止まり。ノンケの異性をだまして結婚するのも相手に失礼で酷なことだなって。だったら割り切ってゲイとレズビアンが、お互い同性同士の恋愛を許容したうえでの“友情結婚”ってことだったら、戸籍上もクリアできるんじゃないかって。

 そうすれば世間的にも、夫婦として他人様の冠婚葬祭に出席できるし、ご先祖様の墓も守ることができる。扶養手当や控除、事業を始めるときの借り入れとかも、お互いが保証人になったりできるし、同性愛同士では不可能だった様々な問題がクリアになる。言ってしまえば、“世間一般の市民権”が得られる。私たち、性的には倒錯しているかもしれないけど、個人としては至って普通の常識人ですから。普通の人が普通にできることは当たり前にしたいという思いがあるんです」(マキさん)

 恋愛結婚でもなく、偽装でもない結婚をするに当たって、二人は3つの誓いを立てた。

 「まず、付き合っているころからそうだったけど、肉体関係はなし。そして、お互い異性の恋人を持つのは自由。最後は、隠し事はせず、すべてオープンにすること。その3つの条件で、“スープの冷めない距離”つまり同じマンションの隣同士の部屋で別居するという形で結婚生活が始まったの」(マキさん)