夜間働く人にも子どもはいるということが忘れられている
―― 監督は、この映画の製作を通して、「夜間保育が果たす役割・重要性」とは、どんなことだとお感じになられましたか?
大宮 「子どもを守る一番大切な場所の一つ」だと感じました。子どもを守るということは、預けている親をサポートすることにもなりますよね。もちろんそれは夜間に限ったことではなく、昼間の保育園も幼稚園も同じですが、夜間にもサポートを受けられる場所があるという安心感を得ている親が多い、という印象です。
世の中24時間動いていることは周知の事実なのに、夜間働いている人たちに子どもがいるということへの想像力は遮断されてしまう。深夜にコンビニが開いていて助かる、深夜の緊急医療や介護、夜間に様々なサービスを受けているのに……。この映画を通して、夜間も子どもが守られる場所があることを多くの人に知ってほしいと思います。
―― ありがとうございます。では最後に、日経DUALの読者にメッセージをいただけますでしょうか。
大宮 そうですね、この映画を見たら、きっと頑張れると思います。お子さんと一緒にぜひ見ていただきたいです。「なんで私だけがこんなに大変なんだろう」と思っているお母さんにも、同じ思いのお母さんたちがたくさんいると知ってもらえますし、夜間保育園という頼れる場所があり、周囲の人に甘えていいんだとお伝えしている作品です。
社会との接点が多いお父さんには、社会と家庭との橋渡しをする役割としてさらに活躍してほしいと思っていますし、この映画を見て、お母さんの気持ちをより理解してもらえたらうれしいですね。
そして、自分がどのように愛されて育てられたか、振り返ってもらうきっかけになってもらえれば……。決して一人で大きくなったわけじゃないんだと。
認可夜間保育園の数は全国で約80。残念ながら、夜間に子どもを預けて働く親、そして夜間保育園への偏見や批判は少なくありません。夜間保育園とはどのようなところか、どんな状況のママ・パパたちが利用しているのか、まずは知ることから始めませんか?
東京都新宿区にある「エイビイシイ保育園」をはじめ、北海道・新潟・沖縄の保育現場を大宮浩一監督が取材。様々な事情で子どもを預ける親たち、保育士たちの葛藤や喜び、子どもたちの笑顔や寝顔など、知られざる夜間保育の現場が余すところなく映し出されています。
(取材・文/清水久美子、撮影/杉 映貴子)