「命・心・体」をテーマにした講演や子育て学講座、執筆など幅広く活動するチャイルドファミリーコンサルタント、バースセラピスト、助産師のやまがたてるえさん。中1、小5の姉妹の母でもあり、松戸市教育委員会の教育委員としても、子どもたちの健やかな成長を応援しています。
 産後から熱心に情報収集をし、子どもの発達・成長段階をある程度把握しながら、成長を見守ってきたという人も、子どもが小学校に上がると手がかからなくなってきたり、仕事で期待される責任も増えてきたりして、「気づいたら、子どもがあっという間に次のステージに成長していた」と、月日が経つ早さを惜しく思うことがあるでしょう。新連載『見守る・寄り添う 小学生からの子ども学』では、大切な学童期の子どもの成長段階を見守り、いざというときには頼りになる存在として子どもに寄り添えるよう、小学生の親が知っておきたいこと、親の適切な関わりについて、やまがたさんからアドバイスをもらいます。

今回は、第二次性徴を迎える高学年の子との関わりについて。性の兆候があったとき、恋心が芽生えたとき、親はどのように寄り添うとよいのでしょうか?

 日々のニュースの中で、事件や犯罪の背景に性被害が関連しているものが以前に比べて増えているように感じます。警察庁によると、「全被害件数に占める、13歳未満の子どもが被害者となった刑法犯の認知件数(以降、子どもの被害件数)の割合は、近年上昇傾向。全被害件数に占める子どもの被害件数の割合の高い罪種についてみると、平成24年中は略取・誘拐が50.8%(95件)、強制わいせつが14.5%(1,054件)、強姦が6.1%(76件)であった」とされています(※)。

 性被害の当事者になるリスクを軽減するため、最低限必要な知識や思春期の変化は、学校に任せきりではなく、親から子へも伝えたいもの。性にまつわることについては大人も話しにくく、伝えづらいものです。しかし、思春期に第二次性徴が始まっていく中で、心や体の成長についてあらかじめ自分自身が理解しているか、いないかによってもその受け止め方は大きく異なります。

 小学校では、4年生の保健体育の授業で性・成長について習うほか、高学年で行く林間学校の前に女の子は、初潮や月経(生理)の知識について改めて確認する時間があったり、ナプキンの使い方などを具体的に学んだりもします。

 子どもの早熟傾向により、親世代のころと比べてより具体的な指導になっているようですが、器官や変化の事象については学んでも、恋や性交渉についてはほとんど触れられることはなく、実際は現場の先生たちの力量や考え方によっても、どの程度の知識を教えてくれるかは大なり小なり異なります。そこで、やはり性に関しては、私たち親が家庭の中で前向きに伝えるような機会を意識して持ってもらえたらというのが私の思いです。思春期に起こるお子さんの基本的な心と体の変化を把握しておきながら、その向き合い方を親子で考えていきましょう。

 男の子の変化の中で、親がまず気づきやすいのはやはり「声変わり」だと思います。変化が現れる時期はおおむね中学生と言われていますが、小学生高学年になる前に顕著に第二次性徴が早いと感じた場合は、発達について相談できる小児科(総合病院や大学病院)を早めに受診することをおすすめします。性ホルモンと身長は関連しているので、早い性ホルモンの影響は低身長を引き起こす可能性があります(身長と性ホルモンの関係については、『男児の身長ピークと低身長の原因 早熟過ぎも要注意』も参考にしてください)。

<男の子の第二次性徴の変化>

■ 精巣やペニスが大きくなる
■ 陰毛が生える
■ ひげが生える 
■ 声変わりが起こる 
■ 全身長が伸びる 

 女の子の第二次性徴の兆候として、親が最初に気づきやすいのは胸の成長。約半数は、12歳までに月経が訪れます。ただし、9歳までに月経が来たときは男の子と同様に性ホルモンの影響で低身長を引き起こす可能性があるため、小児科、または思春期外来の受診をおすすめします。お子さんの成長にもよりますが、主な体の変化とそのメカニズムについては、「声が変わったり、おちんちんに毛が生えたりすることは自然なことなんだよ」と、漠然とした不安感を抱かせないように心の準備をさせてあげられるといいですね。

 第二次性徴の始まりや変化は男女ともに個人差が大きく、遺伝的な因子も影響します。ご自身の体格やパートナーの思春期前後の経験談も、ぜひこの機会に家族で語り合ってみてください。

 様々な成長の中でホルモンの影響から、イライラしやすくなったり、キレやすくなったり、眠くてだらだらしてしまったり、今まで気にならなかったことが気になるなど様々な変化が見られます。男の子は少し暴力的な部分が出てしまうのもホルモンの影響ですし、異性に対する意識の変化も出てきます。(『思春期 ファーストブラ選びと異性の家族への配慮』も参考にしてください)。その変化の中で子どもは子どもたち自身で自分の心と体と向き合おうとしているので、親自身は「あなたのことが大切」というスタンスで過ごしていきましょう。ただ、目に余るようなことがあった場合は「あなたは大切だが、その行為についてはどうだろう」と諭す必要はあると思います。

<女の子の第二次性徴の変化>

■ 乳房の成長(特に乳首から。少しずつ全体が膨らんできます。最初はかゆがったり痛がったりすることも)
■ 性器周りの発毛
■ 初潮(月経が始まる) 
■ わき毛の発毛 
■ 全体的に丸みを帯びた体つきに 
■ ヒップ周りに丸みとウエストのくびれ