一般的に中学受験は、小学3年生の2月から大手進学塾に通い、そこから3年かけて受験のための勉強を進めていきます。しかし、そうなると、小学校生活の半分を受験勉強に費やすことになります。そのため、「小学生のときくらい伸び伸びと過ごさせたい」「今しかできないことをやらせてあげたい」など、塾中心の生活となる大手塾のシステムに違和感を覚える家庭も少なくありません。

しかし、そういう家庭は「中学受験をしない」という選択をするしか道はないのでしょうか?

「勉強のやり方」を教える塾・プラスティーの八尾直輝先生は、「偏差値65以上の難関校を狙うのであれば、やはり大手進学塾の受験カリキュラムに沿って3年間勉強するのが正攻法でしょう。しかし、志望校を絞り、ポイントをおさえて学習をすれば、大手進学塾に3年間通わなくても、志望校に合格することも可能です」と話します。今回は、小学6年生から受験を思い立ち、通信教育と週1回の家庭教師で、中学受験に合格した家庭を紹介。受験準備期間約1年で、志望校合格を目指すためのポイントを実例から解説していきます。

6年生で行きたい中学に出合い中学受験を決意

 小学生のうちは子どもらしく、伸び伸びと過ごさせたい。好きな習い事を続けさせたい。でも、家から通える範囲に気になる学校がある。

<b>「勉強のやり方」を教える塾プラスティー塾長の八尾直輝さん</b><br>ラ・サール中学・高校を経て、東京大学工学部卒。東大在学中に清水章弘氏とプラスティーを創業。現在は取締役塾長として、東京(飯田橋)と京都(烏丸御池)でプラスティーを経営しながら、子どもたちの指導に関わる。著書に『ゲーミフィケーション勉強法』(講談社、共著)があり、教育現場などでも多数講演を行う
「勉強のやり方」を教える塾プラスティー塾長の八尾直輝さん
ラ・サール中学・高校を経て、東京大学工学部卒。東大在学中に清水章弘氏とプラスティーを創業。現在は取締役塾長として、東京(飯田橋)と京都(烏丸御池)でプラスティーを経営しながら、子どもたちの指導に関わる。著書に『ゲーミフィケーション勉強法』(講談社、共著)があり、教育現場などでも多数講演を行う

 「中学受験をするか・しないか」の決断が迫られる小学3年生の冬は、まだ決心がつかなかったけれど、学年が上がるにつれ、「本当にこの選択でよかったのだろうか?」と感じる親御さんは少なくありません。

 今の時代、中学受験をするなら、大手進学塾に通い、そこで3年間かけて勉強をするのが一般的。5年生の初めならまだしも、6年生の段階で受け入れてくれる大手塾は少ないと聞きます。第一、今から受験勉強を始めて間に合うものなのでしょうか?

 「どんな受験でも、受験には“絶対”と確信できるものはありません。でも、今は中学受験の入試スタイルも多様化しているので、必ずしも大手進学塾に3年間通わなければ、中学受験ができないわけではないと思います」

 そう話すのは、プラスティー塾長の八尾直輝先生です。これから紹介するのは、八尾先生が実際に指導に携わった家庭の話です。こうした個人的な実例は、「わが家とはバックグラウンドが違う」「子どもの素質が違う」など、すべての家庭に当てはまるものではないかもしれません。でも、小学生生活の半分を塾中心の生活を送るのではなく、子どもの自主性や小学生の時期ならではの体験などを重視していたり、高学年のお子さんが突然受験を希望する可能性があったりするご家庭に、「やり方次第では、6年生の1年間で中学受験をすることも可能なんだ」「こういうやり方の受験もある」と参考にしていただければと思います。

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 太田かなえちゃん(仮名)は、長野県軽井沢に暮らす中学3年生。現在は、同県の公立中高一貫校に通っています。

 かなえちゃんが中学受験の勉強を始めたのは、小学6年生の春。それまでは地元の中学に進学することを考えていましたが、同じ県内にちょっと気になる公立中高一貫校がありました。そこで一度、授業を見学しに行ってみたら、生徒が主体的に関わっていく授業に惹かれ、「この学校に入りたい!」と思うようになったと言います。

 しかし、そのとき既に6年生。一般的に中学受験の勉強は3年間必要と言われている中、今から受験勉強を始めて間に合うのだろうか?という心配がありました。そこで、かなえちゃんのお父さんは、プラスティーに相談し、当時あった家庭教師サービスを週1回利用することにしました。