番外編 夜中の授乳は夫婦交代でする

 仕事と家事だけでも大変なのに、子どもが生まれると育児が加わり、忙し過ぎて睡眠時間を確保できないという嘆きは本当によく耳にします。とくに赤ちゃんがいるご家庭では、夜中の授乳に追われたり、夜泣きをされて睡眠不足に陥っているママが多いかもしれませんね。

 でも、ちょっと待ってください。

 夜中の授乳で睡眠不足が2~3日続くのはしかたがありませんが、それが毎日になってしまうのはこの先、大問題です。

 赤ちゃんを迎え、いとおしさやお世話をする楽しさ、がんばって育てていこうという気持ちの高揚などで、少しくらい寝不足をしても大丈夫と思うこともあるかもしれません。でも、それは「おりこうさん脳」の考え方です。

より進化した動物が獲得したのが「おりこうさん脳」

 脳の働きを分かりやすく説明するために、私は人間の脳を大きく2つに分け、「古い脳」「新しい脳」と呼んでいます

 古い脳は、脳幹とその上に乗る大脳辺縁系と小脳で、呼吸や食欲、自律神経など、無意識で働き続ける体の機能をコントロールしています。古い脳は生命維持に必要最低限な機能を担っているため、これが働かなければどんな動物も生きていくことができません。

 恐怖や不安を感じる情動もこの部分にあり、睡眠をコントロールしているのも古い脳です。

 一方、新しい脳は大脳皮質で、記憶や思考、言語など、人間が人間らしくあるための高度な心や情感を司り、より進化した動物が獲得してきた部分です。私はこれを「おりこうさん脳」と呼んでいます。

 日が暮れて、夜になると人は自然に眠くなりますが、これは、生きていくために古い脳が「眠りなさい」と指令を出しているからです。

 ところが、現代の私たちは、「なんとか今日中に仕事を終わらせなくては」とか、「育児中は睡眠がこま切れになってもしかたがない、など「おりこうさん脳」で考え、ホルモンバランスの乱れや免疫力の低下など体のサインを無視して、がんばろうとしてしまいます。

 でも、ママの心身の健康のために、無理を重ねてしまうのはNGです。

ママしか授乳できない環境を作るのはナンセンス!

 日本のママはついつい自分の健康を犠牲にしてまで家族のために働こうとしますが、家族がいるからこそ、自分自身の健康についてもきちんと意識して生活しないといけません。

 そうは言っても誰が赤ちゃんのお世話をするの? と疑問に思うママもいるかもしれませんね。でも、簡単です。人の手を借りましょう

 日本の育児は、赤ちゃんにおっぱいをあげるのはママの役目だという固定観念でがんじがらめになっていますが、ママしか授乳できない環境を作ってしまうのは、この先、自分自身の首を絞めることになってしまいます。パパにも夜中の授乳をしてもらいましょう。母乳育児のママも、搾乳して冷凍母乳にしておけば、パパに代わってもらえます。

 そもそも、出産という大きな仕事を済ませたばかりのママに、夜中も3時間おきに起きて、授乳しなさいというのは、酷な話。知識で武装して「おりこうさん脳」で理解し、納得しようと思っても、古い脳は命を守るためにそれを許してはくれず、心身に不調を来す形で警告を出してきます。

 私は娘が生後50日のときには仕事に復帰しましたので、娘をミルクと、哺乳瓶に慣れさせて、週に2日くらいは「今日は寝るのでよろしく~」と夫に頼んでぐっすり眠っていました。夜泣きなどで起こされて大変なときも、夫と交代しながら育児をしました。

 働くママが夜もろくに寝ていなかったら、体がもたないに決まっています。子どもを夫に任せて寝ることに、罪悪感を持つ必要は全くないのです

次回は、パパの眠りをハッピーにするコツをお届けします。

(取材、文/小山まゆみ、イメージカット/iStock)