多くの自治体では秋ごろから、来年4月に認可保育園へ入園するための申し込みシーズンが始まります。すでに保育園の見学を始めている人もいるかもしれません。園の見学を進めていくと、気になるのが「保育の質」。どの保育園でもみな同じというわけではありません。大切なわが子を安心して預けられる保育園をどのように見極めたらいいのでしょうか?
 今回の記事では、10年以上前から保育園の問題を追っている労働経済ジャーナリストの小林美希さんに、保育園の実態や保育園見学のポイントについて聞きました。

【年齢別特集 妊娠~職場復帰ママ・パパ】
(1) 保活2018 定員を増やしても入園しにくい都心部 
(2) 認可も認可外も、園によって「保育の質」格差が拡大
(3) 保育園でもブラック園?「保育の質」は低下傾向に
(4) 園児の精神的虐待や親いじめ ブラック保育園の実態
   ←今回はココ!

  子どもの成長に伴い、ママやパパが抱く育児の喜びや悩み、知りたいテーマは少しずつ変化していくものです。「プレDUAL(妊娠~職場復帰)」「保育園」「小学校低学年」「高学年」の4つのカテゴリ別に、今欲しい情報をお届けする日経DUALを、毎日の生活でぜひお役立てください。

保育士の“士(さむらい)”が頭数いればいい

日経DUAL編集部 前回の記事で、保育の質を悪化させている要因について伺いました。改めて、保育の質が悪化するというのは具体的にどのような状況なのでしょうか。

小林 保育士が時間的、精神的に追い詰められることで現場に余裕がなくなってしまう状況で、そうなると子どもに対する精神的虐待が起こります。私が様々な保育園を取材してきたなかで感じるのは、そのような現場が確実に増えてきているということです。

 例えば、取材したある園の2歳児クラスでは、朝の会で保育士が話している最中に子どもが友達のほうを見ていました。すると、その保育士は「○○くん、ふざけないで。立っていなさい」ときつく子どもを叱りつけ、立たせていました。

 本来ならば、子どもの近くに寄って「どうしたの?今はこうする時間だよ」と繰り返し伝えることで信頼関係ができ、「あの先生が言うから、しっかり話を聞こう」となるのが理想です。けれど、その保育士は、子どもの成長を考えると厳しく注意し罰を与えるのが当然だと、自分を正当化していました。

 他にも「みんな話を聞かないから、今日は散歩に行きません」「何度言っても、なぜ分からないの!」など、本来はもし親がそう言っているのを聞いたら保育士が注意すべきような言葉を、保育士の立場で言ってしまう。当たり前のことがすっぽり抜けているような感じを受けました。

―― 現場の余裕がないとはそういうことなのですね。

小林 保育園の増設が進み、保育士を確保するのが困難な時代です。かつては保育士試験で落ちていたような人も、以前より簡単に受かってしまう。保育士不足を解消するためには、“士(さむらい)”が頭数いればいいのです

 一方で、良い保育士ほど辞めてしまう傾向があると思います。何時何分までに散歩に行って着替えをさせて…とスケジュールをきっちり守る保育士が良い保育士とされるなかで、時間をかけて子どもひとり一人に丁寧に対応する人は異端児になりがちです。だんだん居づらくなったり、自分が思い描いていた保育とのギャップを感じたりして、結局は辞めていってしまうのです。

<次ページからの内容>
・パンツを忘れたら、6歳の子どもに紙おむつ
・厳し過ぎる”親教育”
・保育園見学で何を見る? 7つのポイント
・人員と経験の不足が一番見えてくるのは●●の時間
・保護者の声の上げ方&チェック方法