武器があれば女性も上方移動できる
羽生(以下、――) 濃密な2日間、お疲れさまでした。坂東先生は「覆面座談会」にも参加され、女性エグゼクティブたちの本音トークも聞かれました。まず、最も印象的だったのはどんなことでしょうか?
坂東さん(以下、敬称略) 女性エグゼクティブの皆さんの転職経験の多さに驚きました。日本の成功体験を築いてきた“おじさん世代”とは、経験そのものが違いました。女性でも武器があれば、転職に上方移動が可能だという成功例を見せていただきましたね。大企業に入ったら、地位を手に入れてそれを後生大事にしていることが今までのキャリアでは正しいこととされてきましたが、別のキャリアパスが生まれていることを感じました。
―― 大企業を辞めて、全く違う分野で専門的な資格を取り、その分野のスペシャリストとして再び同じ企業に戻って、今は新卒で入ったときとは全く違う部署でかなり高いポジションを手にした方の例もありました。
坂東 「子どもが生まれても仕事を継続する」が正しいと言われているなかで、出産を機に別のキャリアを選んでも、武器さえあれば上方移動していけるんですね。
―― 能力を武器にして、転職でステップアップしてきた方もいました。次の転職を選ぶときも自分のキャリア全体にとってプラスになるような転職先を選んでいますよね。
エンジンを吹かす時期は企業ごとに違う
―― 同じ企業に35年間勤めるうえでの頑張りどころと、キャリアチェンジをしながらステップアップしていく女性の頑張りどころは違っていましたね。
坂東 女性が戦力として認められること自体が大変で、その中で苦労する日本的伝統企業の管理職と、能力を身に付けてからバリバリ働いて成果を上げ続けなければならない外資系企業とでは、「エンジンを吹かす時期」が違うのだなと思いました。そもそも、一昔前の日本企業では、一般職から総合職に転換することすら大変でしたから。
―― 今の若手女性は、そこを頑張らなくていいというショートカットコースがあるので、以前と比べれば有利といえば有利なのでしょうか。
坂東 有利ではあるけれど、鍛えられていないともいえます。覆面座談会では、現在40代の方が、新卒時代に遭遇したいじわるな「お局」に対して、難しい仕事を覚えることでその分野のエキスパートになり、「3年以内に敬語を使わせてやる」と頑張った、というエピソードがありましたよね。悔しいこともいっぱいある中で、すごい努力をしたんだと思うの。
ただ、大企業に残るという選択は、ジェネラリストになって出世していくことが目的ではなく、「やりたいことがあるから」というプロジェクト志向も強まっていると感じました。