やりたいことを実現するにはポストが必要

―― 今回は、日本企業の女性登用の差についても感じました。先生のところには、企業から相談が来たりするのでしょうか。

坂東 「最近女性を登用しているんですよ」という自慢話が多いですね(笑)。ただ、新人の女性は非常にやる気があるけれど、30代、40代以上が管理職になかなか手を挙げないという悩みがおありのようです。

 でも、グループセッションでもあったように、鍛えようともしないでいきなり命じるのには無理があります。ちょっと変わった仕事を2つ、3つ経験させ、研修にも出し……、と徐々に育てていかないと準備不足になってしまいます。

―― 参加者の皆さんは、管理職になったことで裁量が増え、楽しくなったと。ただそう言っても、その楽しさがいまいち伝わりにくい。

坂東 私は「自分の不得意なことは部下に頼めばいいから、楽になるよ」と言っています。他には、「質の高い人と付き合えるようになるよ」「お給料が増えるよ」とか。どうも「扱える仕事や予算が増える」というのはプラスに響かないのよね。

―― 今回ヒントを得たのは、女性ならではの「やり抜きたいこと」と「社会とのコミット」を実現、達成するためにはポストが必要になる、リーダーになったらエンジョイすればいいということでした。

坂東 そうなんですよ。皆さんも言っていたように、リーダーになることが目的でなく、あくまで手段ですから。

 「期待されていたことをやっていたらリーダーになった」という話はあっても、自分からストーリーを描いて次のポストを目指している人はなかなかいなかったですよね。その昔、アメリカのバイスプレジデントクラスの人たちが「私たちはたまたまいい場所にいたから、いいポストに来られた。10年前だったら無理だったわ」と口々に言っていました。1980年前後のアメリカの話ですが、それを思い出しました。重圧があって苦しいこともあるものの、恵まれたこの時期、トップを取りにいこうとする女性がもっと増えてくれるといいですね。