本音は言う。でも、本噛みはしない

―― 今回参加した14人の方々は、かなりスクリーニングされた成功者でした。先生からご覧になって、そのノウハウで印象的だったことはありますか?

坂東 「甘噛み」ね(笑)。

―― やっぱり、そうですよね。正論を言うのはいいことだとしても、ガブッと噛みついて相手のプライドを傷つけたら、こちらも無傷ではいられません。そこをかわいく、「~じゃないですか!」などと、ずけずけ本音を言う。でも、本気では噛まないというメッセージも漂わせる。

坂東 単なるかわいい、いい子ではなく、手心を加えて、ちょっとだけ手を噛む。なるほど賢いなと思いました。

―― ですが、ややもすると「どうして男を立て続けるんだ」「そんなことまでして取り入るのか」という反論も出てくると思うのですが、私は、「甘噛み」は戦略というか、余裕があるからこそのなせる技のように思えます。

坂東 そうですね。自分が本当に認められていないなら、すり寄ってかわいいふりもしなければならないんでしょうけれど、基本的に十分、自分の力は相手から認められている状態です。そこからもう1ステップ、アピールしたいとき「甘噛み」するというのは戦略的ですね。

スポンサーを見極める

―― そもそも、上司なりトップなりへの「甘噛み」がどういう文脈で出てきたかといえば、「スポンサー」という文脈の中で、です。

 人格が立派で、よい方向へ導いてくれる「メンター」に出会うことが大切と言われますが、なかなか出会えるものではない。ならばキャリアの節々で機会を与えてくれる「スポンサー」をその都度得たほうが、よっぽど役に立つのではないか? という仮説のもとに、今回参加者の方々に聞いたのですが、人数やそのときの年齢が、パッと出てくるのに驚きました。いつどこでどんなスポンサーに巡り合ってきたか、はっきりと自覚していらっしゃるんですね。

坂東 メンターのように人格者であって総合的に頼りにするエモーショナルなものではなくて、具体的な機会や支援を提供してくれる存在、チャンスを与えてくれる相手ということですね。

―― 結果論なのかもしれませんが、挙がってきたのはすべて男性の名前でした。

坂東 組織の中で力を持っている人間は、今のところ男性だということでしょう。

―― しかし「スポンサー」の中身は多様でした。上は社長から、少し年上でお互い成長しながらここぞというときに持ち上げてくれる人まで。もし彼女たちの答えるスポンサーが全員社長であったら違和感があったと思います。それでは単なる「社長のお気に入り」ですから。

坂東 きちんと見極めて、「この人」というスポンサーをつかんできたのね。私はそういう存在がいない中で手探りをしながら、ふと「あ、この人はスポンサーなんだ」と模索しながら見つけていったわけですが、私よりよっぽど上手だなと思いました(笑)。