テクノロジーで情報共有をフォーマット化

林田 Women Willについてもう少し詳しく教えてもらえますか?

山本 Googleは制度的にも風土的にも、柔軟に働ける環境はもともとありました。ただそれは、テクノロジーで時間と場所にとらわれずに自分の都合に合わせて働けるというベースがあってこそ。僕自身、Google 入社後に第一子が生まれ、周りを見渡してみると、テレビ会議を活用して病気の子どもをケアしながら自宅で働いたり、カレンダーで子どもの送り迎えや学校の行事などを夫婦で共有して働く同僚が多くいました。そこで、世の中の多くの人たちも、もっとテクノロジーを活用すれば、子育てと仕事の両立がしやすくなるのに、という思いを抱いたんです。

 また、ちょうど同じころ、Googleもそれまで国ごとに進めていたアジア太平洋地域での女性活躍促進の取り組みを整理しようとしていました。そのタイミングで、僕もWomen Willに関わるようになったんです。名前はWomenと付いていますが、テクノロジーを活用することで子育てと仕事の両立やワークライフバランスが進むのは、男性にとっても非常に重要なこと。僕は男性ですが、自分事として取り組んでいます。

 Women Willでは、男女の格差をなくし、テクノロジーの力で「ワークハードからワークスマートへ」働き方を変えていくための様々な取り組みを進めています。実際に個人や企業が実践し、その結果を共有しています。

林田 サイトを拝見しましたが、個人レベルから企業レベルまで、大小様々な取り組みを進めていますね。そして、そのすべてが実践的だと感じました。テクノロジーで働き方を変えるという趣旨ですが、テクノロジーはワークだけではなく、ライフ、つまり仕事と育児の両立の在り方も変えられると思うのですが、いかがでしょうか?

山本 おっしゃる通りです。テクノロジーを活用することは、マルオペ育児や夫婦のコミュニケーションの円滑化にとって、非常に有用だと思います。Women Willの取り組みを通じて様々なご夫婦の話も聞くのですが、妻側からは「うちの夫は家事も育児も全然やってくれない」という声をよく聞きます。でも、夫側からは「何から始めたらいいのか分からない」とか「家のどこに何が置いてあるのか分からない」といった声が聞こえてきます。

 夫は協力したくないわけではなく、協力するときの情報共有がきちんとなされていないから、「入り口」が分からないわけです。仕事では情報伝達の方法がフォーマット化されているのですが、家庭ではフォーマット化されていないことが、夫婦間の情報共有がうまくいかない原因だと思います。

林田 フォーマット化というと?

山本 どこで、どうやって、何の情報を共有するか、その形式です。皆さん、手帳に書いたり、カレンダーに書いたり、冷蔵庫に貼ったり、様々な共有の仕方をしているのですが、それだといつ更新されたものか分からなかったり、職場や外出先からはチェックできなかったりして、情報伝達が滞ってしまう。つまり、夫婦間の情報共有の基本的な部分がきちんと整備されていないことが多いようです。

林田 テクノロジーを活用して情報をフォーマット化することで、スムーズに情報共有できるようになるということでしょうか。テクノロジー活用のメリットについてもう少し教えてもらえますか?

山本 情報共有にテクノロジーを活用するメリットは、主に五つあると考えています。