夫と出会って暮らし始めてからは、避妊に気を付けていた

 夫の魔裟斗さんと出会ったのは、そんな最中の19才のときでした。私は免許取りたてで、高速道路を運転して友人との待ち合わせに向かっていました。そうしたら、突然車がオーバーヒート。あわてて高速道路を降り、友人に来てもらってJAFを待っていたところに、偶然通りかかったのが彼だったんです。

 彼は、友人の友人でした。このとき全くの初対面だったのですが、なぜか「この人と結婚するんだろうな」と予感しました。不思議ですね。

 それから時々会うようになって、やがて付き合うようになりました。実は、夫は「昭和の男」(笑)。自分の気持ちを言葉にすることはあまりなくて、「男は黙ってやるべきことをやればいい」ってタイプです。だから、付き合うときは私からアピールしたんですよ。

 「(付き合う相手として)私、どうですか?」って言ったら、彼は「うん」と言うだけ。「うん、じゃなくて」と食い下がっても「いいんじゃない?」って。気が付けば2人で大笑いしてました。

 一緒に暮らし始めたのは、付き合って1年後の20歳のとき。私は1人暮らしをしていたのですが、ストーカーに遭ってしまって。怖い思いをしたので、一緒に暮らすことにしました。でも、彼は将来まで真剣に考えていて、「同棲する=いずれは結婚する」と思ってくれたようでした。それならお互いの両親にあいさつしようということになり、彼の両親に会いました。そのとき、彼の母から「一緒に暮らすのはいいけれど、予期しない妊娠はしないようにしてね」と言われたんです。

 当時の夫は、現役で活躍していた勢いのある若手格闘家。これからK-1のトーナメントにも挑戦しようという時期でしたから、素直に「そうだなぁ」と思いました。現役のスポーツ選手というのは、体調管理はもちろんですが、メンタル面での調整にも過酷なものがあります。もし赤ちゃんが生まれても、夫はあまり赤ちゃんとの生活を楽しめないだろうし、私自身も夫のケアと赤ちゃんのお世話で余裕がなくなる。それに、まだ結婚ではなくて一緒に住んでいるだけの状態。赤ちゃんができてしまったら、様々な面で迷惑もかかってしまう。夫の母は、夫と私、どちらのことも考えてアドバイスしてくれたんだと思いました。

 飲み続けていたピルには避妊の効果もあります。それまでは、仕事が忙しかったりすると飲み忘れることもしばしばでしたが、それからは飲み忘れないように細心の注意を払うようになりました。「飲み忘れたらどうなりますか?」と先生に聞いたとき、「飲むのをやめて3カ月ぐらいから妊娠しやすくなる」と言われたのが、自分の中では「飲み忘れたら妊娠しちゃう!」と誤ってインプットされていて、そのころは「飲み忘れちゃいけない!」とビクビクしていたほどです。

 よく考えてみれば、排卵しにくくて、生理も来ていないのですから、おかしいですよね。妊娠するわけがない。それなのに、そのころの私はずっとそう思っていたんです。「赤ちゃんは自然とできるもの」というイメージもあったと思います。そのぐらい、自分の体の仕組みについて、本当に無知でした。

 思い返すと、なぜ赤ちゃんができるのか、家庭はもちろん、学校でも詳しく教えてもらったことはありません。知っていたのは、「精子と卵子が出会って赤ちゃんができる」という程度の知識でした。排卵して、卵子が精子と出会って、受精して、子宮に着床して、一つひとつのことがすべてうまくいって、はじめて赤ちゃんができる。そのことを知らなかったから、「排卵しにくい」と言われて、「赤ちゃんができにくい」と頭では分かっていても、現実のこととして結びついていなかったのです。

 だから、今、「なかなか授からないけれどどうしよう……」と迷っている方がいたら、ぜひ検査を受けてほしいと思います。女性も男性も、自分の体を知るということは妊娠への近道になると思います。