昨年、37歳で第一子を出産した作家の山崎ナオコーラさん。妊活、健診、保育園落選など、子どもが1歳になるまでの親と子の毎日を綴った出産・子育てエッセイ『母ではなくて、親になる』(河出書房新社)が、今年6月に刊行されました。

 山崎さんが結婚や出産、育児を通じて感じた“違和感”は鋭く、ワーキングマザーはもちろん、誰しも共感・納得してしまうもの。1歳4カ月の子どもを育てている山崎さんに、育児を楽しくする秘訣や夫婦のあり方について話を聞きました。

育児がつらく感じるようになるかと思ったら、楽しいことばかり

日経DUAL編集部(以下、――) 子どもが生まれて最初の1年を振り返ると、どんな1年間でしたか?

山崎ナオコーラさん(以下、敬称略) 長いか短いかで言うと、短いですね。子どもがいるだけで夢みたいなので、毎日が天国のような感じで楽しくてたまらなかったです。

―― 本来なら育児は楽しいものだと思うのですが、乳幼児の母親に話を聞くと、育児はつらい、大変という声が聞かれます。山崎さんのように、ストレートに楽しい、と言える人は、逆に珍しいのではないでしょうか。

山崎 どんなことでもそうだと思うのですが、人はそれぞれで、同じことでもつらい人もいれば楽しい人もいる。私の場合は子どもを産んで楽しいことばかりだったので、こういう人もいるよと、本にすることに意味があるのではと考えました。

 私自身、妊娠中に読んだ文章は「つらい」「大変」という言葉が多く、自分もそんな風になるのかな、と思っていました。でも、実際に産んだら育児が楽しくてたまらなくて。体質によって産後うつになってしまったり、子どもの個性によってはあまり寝られなかったりする人もいると思います。

 私の場合は体調のトラブルもなく、よく寝る子だったので、あまり寝不足になりませんでした。夫が思ったよりも育児をやっているので、精神的に切羽詰まっていない、というのもあると思います。

<span style="font-weight: bold;">山崎ナオコーラ</span> 1978年、福岡県生まれ。国学院大学文学部日本文学科卒業。2004年、会社員をしながら書いた『人のセックスを笑うな』で第41回文藝賞を受賞し、作家活動を始める。著書に、小説『浮世でランチ』『美しい距離』などのほか、エッセイ集『指先からソーダ』『かわいい夫』などがある
山崎ナオコーラ 1978年、福岡県生まれ。国学院大学文学部日本文学科卒業。2004年、会社員をしながら書いた『人のセックスを笑うな』で第41回文藝賞を受賞し、作家活動を始める。著書に、小説『浮世でランチ』『美しい距離』などのほか、エッセイ集『指先からソーダ』『かわいい夫』などがある