虫歯の原因である「酸」を作らないキシリトール、歯を守るフッ素

 むし歯は一度なってしまったら、削らないと治らないと思われているかもしれませんが、そんなことはありません。早い段階で治療を開始すれば歯を削ったり、ましてや神経を抜いたりすることなく回復することが可能です。初期のむし歯は、歯の表面のエナメル質が「白濁」と呼ばれるチョークで描いたような白っぽい状態になっています。白濁ができる場所というのは、実は「歯垢(プラーク)」の直下。歯垢は、歯とそっくりの色をしているので、まるで忍者のように歯の表面に張り付いています。だから、ママやパパの目には、どれが歯垢なのか気づきにくいわけです。その歯垢を専門家が見つけ、磨いてあげると、その下から「白濁」状態の初期むし歯が見つかる、というわけです。白濁を放っておくと早い子では、数カ月で穴が開いてしまいます。穴が開いたむし歯は、残念ながら、歯科医院での治療が必要になります。でも白濁の段階なら、再石灰化の治療をすることで、修復させることも可能なことをぜひ知っておいていただきたいと思います。

親子両方とも、歯のケアをするに当たって、ポイントをまとめると下記のようになります。

 こうして見ると分かるのは、キシリトールとフッ素が大事なキーワードだということ。白濁の段階になったとしても、それ以上むし歯を進行させない助けとなるのがフッ素とキシリトールです。

 まずフッ素について説明しましょう。フッ素は歯を強くします。歯の一番表面を覆っているのはエナメル質ですが、フッ素はこのエナメル質を強化して、ミュータンス菌が出す酸に負けない歯質にしていくことができます。歯質強化をしていない歯は、まるで裸のまま相手と闘うようなもの。酸の攻撃にあっという間にやられてしまいます。フッ素で歯質強化した歯は、鎧を着て戦闘に臨むイメージです。今は、母子健康手帳の【1歳6カ月の頃】の保護者の記録のチェック項目に、「歯にフッ化物(フッ素)の塗布やフッ素入り歯磨きの使用をしていますか」という項目もあります

 ただし、このフッ素は適正な量を使用することが大切で、歯みがき剤で使える量は年齢によって異なります。下記の表を見てご確認ください。

 フッ素入り歯みがき剤は、世界中で使われているので、安全に使用する量が決められています。フッ素は正しく使うことで、私たちの歯を生涯にわたってむし歯から守ってくれる大切な成分なのです。

 もう1つのキシリトールについて説明しましょう。キシリトールはフィンランド語で「白樺砂糖」の意味。キシリトールは白樺や樫の木などの原料からつくられる天然素材の甘味料です。分子構造がスクロース(砂糖)と非常に似ているため、ミュータンス菌は餌になる砂糖を食べているつもりになります。でも実際には、キシリトールでは酸を作りだすことができません。砂糖ではないのにせっせとキシリトールを食べるうちに、栄養源がなくなったミュータンス菌は疲弊します。こうして、キシリトールはミュータンス菌に酸を作らせないだけでなく、ミュータンス菌そのものを減らすことで、歯を守るのです。

 実際に、歯みがきはもちろん、フッ素ケア、キシリトールを使って、口腔内のミュータンス菌を減らしていくことができます。穴が開いてしまったむし歯は治療が必要ですが、その後むし歯にしないためにフッ素とキシリトールで親子ともに歯を守りましょう。このことが、赤ちゃんの乳歯、さらには永久歯を守り育てることにつながるのです。