“セックスレス”という言葉がすっかり定着し、その状態にある夫婦は珍しくなくなりました。それどころか、下手をするとセックスレスの夫婦のほうが多い、といった傾向も出てきています。

 一方、セックスレスでも仲良しという夫婦や、セックスはしないけれどもスキンシップはよくするという人もいます。共働き家庭が増え、夫婦の役割やその在り方も多様化が進み、「かくあるべき」という伝統的な夫婦像が崩れつつあるようです。

 夫婦にとってセックスとは、どうしても必要なものなのでしょうか? 今回日経DUALでは、夫婦のセックスレスとスキンシップの在り方について徹底的に取材しました。読者の夜の営みにまつわるアンケートの結果を紐解いた第1回に引き続き、第2・3回では一歩踏み込んで、セックスにまつわる読者の具体的な悩みを基に2人の専門家にアドバイスを伺います。まずは「ママの本音編」です。

【“仲良しセックスレス”はアリ? 夫婦のスキンシップ特集】

第1回 “夜の営み”アンケート「セックスは好きですか?」
第2回 男女の性欲は加齢により変化 妻の本音と女性の体 ←今回はココ!
第3回 妻としたい気持ちと折れる心 夫の自尊心と男の本能
第4回 閲覧注意! セックスの悩みに答える「直球Q&A」
第5回 マンネリ夫婦の関係改善 スキンシップ&歩み寄り術
第6回 ゲイとレズの逆転夫婦「ノンセックスでも深い絆」
第7回 「でも、子どもは欲しかった」結婚23年目の初告白

「産前と産後のセックスは別物」 変化を知って“落としどころ”を見つけていく

 ママからの声で多かったのが「疲れていて、今はセックスどころではない」という意見。産後、気力・体力面の余裕のなさや、夫の態度に対する不満の声が目立ちました。1日24時間の中で、家事・育児に仕事に、さらに、子どもの教育に……と日々頑張るDUAL読者にとって、“セックス”の優先順位が下がってしまう時期があるのが本音のところかもしれません。

<産後のセックスに嫌悪感がある>

★体の変化
・「夫はセックスを望んでいるが、出産で持病が悪化したことや育児ストレスがあるため、そんな気力も体力もない」(41歳・夫は33歳・子どもは3歳・セックスは3カ月に1回程度)

★夫の態度に対する疑問や不満
・「夫の帰宅が産前と変わらず、毎日深夜近く。ほぼ『ワンオペ育児』なので、子どもが寝たら自分も休みたい。夫はもっとセックスしたがるが、これくらいの頻度が限界」(37歳・夫も37歳・子どもは年長と年少・セックスは3カ月に1回程度)

・「子育てと仕事の両立で疲れているので、セックスする体力がない。日ごろからもっと優しい言葉をかけてくれたり、スキンシップをとってくれたりすればセックスをする機会が増えるかもしれないが、産後クライシスを3回も経験しても、夫は変わらない」(40歳・夫も40歳・子どもは小学校3年生、年中、2歳・セックスレス状態は3年)
※読者アンケートより。内容は一部編集しております

 「産後のセックスに乗り気になれない」という働くママの本音に対して、産婦人科医で性科学者の宋美玄(そん・みひょん)先生は、「子どもの教育やキャリアビジョン、お金のことに関しては夫婦で熱い議論を交わせるのに、セックスの話題になるとどうしても“秘めごと”になりがち。夫婦生活は、夫婦関係の様々な部分が表れるとてもパーソナルなものであり、世間でよく言われている情報や典型的な回数、頻度だけで良し悪しを測れるものではありません。本質的には夫婦間のコミュニケーションが重要なので、『(疲れていて)乗り気になれない』という気持ちを夫に素直に伝えられるといいですね」とアドバイス。夫婦間でお互いの心の内を伝え合い、良好な夫婦関係のために“落としどころ”を見つけていく大切さを強調します。

ほぼ「ワンオペ育児」で、子どもが寝たら自分も休みたい……(日経DUAL読者アンケートより)
ほぼ「ワンオペ育児」で、子どもが寝たら自分も休みたい……(日経DUAL読者アンケートより)

 「そのうえで知っておいてもらいたいのは、産後はホルモンバランスの関係で、女性の性欲は減退するということ」と、宋先生。

 「出産後は疲れを感じやすいだけでなく、授乳中は体力自体も低下します。さらに授乳や夜泣きなどで睡眠不足の傾向もありますし、慣れない育児に奮闘する中、産休・育休復帰後は、仕事上のプレッシャーもある状態。セックスをする時間の捻出自体が問題なのではなく、『その気になれない』ということは十分起こり得ます。そこに嫌悪感を抱く必要はなく、産後のセックスは産前とはまったく別の状態が始まるということを夫婦お互いに理解してもらいたいですね」

≪次ページからの内容≫
・セックスを断る罪悪感 我慢しすぎて相手を「悪者」にしないで
・一方的な思い込みによる言動は、後の夫婦関係に溝をつくりやすい
・スキンシップで満たされる女性 触れ合いだけでは物足りない男性
・心と時間の余裕を作るため “必要経費”としての家事・育児代行サービス
・男女の原体験の違い 男女の性欲は加齢により逆転する?
・「セックスできれいになる」って本当?