「公立中学校の受験対策は塾が必須」は神話だ!

 さて、高校受験の話に戻りましょう。高校受験イコール塾、と考えている人は少なくありません。東京、神奈川、埼玉の中学3年生の通塾率は7割に上るというデータもあります。

 「学校は進学指導をしてくれないので、塾に行かなくちゃ情報が集まらないのよね」という言葉をよく聞きますが、これは塾の営業トークにすぎません。「先に志望校ありき」で進めようとするから「情報」が必要になるというだけのことです。これについては、のちほどお話ししましょう。

 「家では勉強しないから、塾に行かせないと成績が上がらない」という人もいます。でも実際には、塾に通ったところで成績が全く伸びない子という子のほうが多いのです。「とりあえず塾にいれておけば安心」だなんて幻想です。

 多くの子は、自分がなんのために塾にいるのか分かっていません。塾で何をすべきかも分かっていません。高いお金をかけているのに、無益な労働に従事しているような気分になっています。彼らはまるでサラリーマンたちが家に帰るまえに駅前の立ち飲み屋でストレスを解消するように、コンビニに寄って息抜きをして帰ってきます。あー今日もよく塾で耐え抜いた、と。

 こんなことには、意味がありません。塾は、利用するものです。それを子ども自身が自覚していなければ、効果はでません。塾に通おうが、通うまいが、大事なことは先ほどお話しした「勉強の仕方」を理解することです。それを学べない塾であれば、通わせる意味がありません。

「あの子の親は油断できない」と塾に思わせる

 そして、親の姿勢も大切です。繰り返しますが、「塾に預ければ自動的に成績が上がるだろう」という幻想は捨ててください。最初に塾に見学や相談に行くと、面談がありますね。そこにいる講師はプロですから、入塾させるための会話はうまいものです(もちろん「マニュアル」もあります)。

塾講師―― 志望校はどちらですか?

母―― え? でもまだ2年生ですし……。

塾講師―― どちらですか? まずは今の志望校を言ってください。ほら、〇〇くん、自分の口で言おう。

子ども―― ……無理だと思うけど、△△高校に行きたいんです。

塾講師―― △△高校! ちっとも無理じゃありません。まだあと2年もあるんですから! おまかせください。つきましてはこのコースにこの教室をプラスして……

 と、どんどん話は進んでいきます。志望校を口に出したところで、エサにひっかかったも同然です。「おまかせすれば安心」というエサに。

 いいですか? 塾は「おまかせ」するところではありません。利用する場所です。志望校を聞かれたら、「まだ考えていません。中3の11月時点の成績で決めたいと思います」でいいのです。簡単にひっかからない親であることを、最初に伝えましょう

 子どもの成績が伸びない場合なども、子どもに文句を言うのではなく塾と話し合いましょう。一方的に要望するのではなく、双方ができることを具体的に、論理的に相談するのです。

 親がそういう姿勢を見せると、子どもは大切にされます。塾の講師は経験上、親が論理的な人間であれば、子どもも論理的な思考が育っている可能性が高いということを知っています。真剣に教えれば伸びる子だと分かるので、大切に指導するのです。

(イメージ)
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