子どもが社会に出ても困らないよう育てるとき、大事なのは甘やかすことではなく「愛情を注ぐ」こと。それは関心を持ってよく子どもを見ることだと葛恵子さんは言います。17年目に入った子ども向け料理教室「リトルレディーズ」で子どもを温かい目で見守ってきた葛さんは、自身も一男一女を育て上げたベテランママです。仕事を本格的に始めたとき、お子さんたちはまだ中学生と小学生でした。本連載の最終回は、どんなふうに仕事と子育てを両立させたのかを伺いました。

今はぶつかっていても、いつか助けてくれるかもしれない「将棋の駒」

 「リトルレディーズ」は子どものための料理教室ですが、お母さん方からも時折、色々な相談を受けます。幸い、長男が本当に色々とやらかしてくれたので、大抵のことは私にとっては「一度通った道」です。ですから、私でも少しお母さんを安心させることができるかなと思っています。

 子どもたちが学校生活を送っていると、深刻ないじめとまではいかなくても、友達関係で必ず何かしら問題は起こるものです。「子どもが意地悪をされているようだ」という相談の電話を受けることもあります。いじめまでいかない微妙なラインのようなら、将棋の駒に例えて説明します

 自分の子どもがいて、その周りにはいろんな駒がある。今はこの駒がぶつかってくるかもしれないけれど、次に進んだときにはその駒が必要になるかもしれないわよって言っています。意地悪を言ってくる子っていうのは、あなたのお子さんの短所とか弱いところを見抜いてそこを突いてくる。つまり、そのくらいあなたのお子さんのことを分かってくれているわけだから、もしかしたら2年後には、すごくいい助言をくれる存在に変わるかもしれません。みんな役割を持った駒だとね。

 とりわけ小学校にいる間、子どもの交友関係は目まぐるしく変化します。クラスが変わる、転校生が入ってくる、といったちょっとした環境の変化が影響することもあります。

 長男も、地元中学の「四天王」と呼ばれるワルの一人に目をつけられていたことがありました。でもその男の子は、息子が別の先輩に絡まれそうになったときには助けてくれたというのです。だいぶ後になって私は知ったんですけれどもね。いつ誰が助けてくれるか、本当に分からない。

 だから、「駒の数は多いほうがいい!と思って親が介入する前に、少し静観してみたら」ってお母さんに言うことがあります。それでもダメだったらまた別の方法を考えよう、って。もちろん、けがをするような場合は別ですよ。