「役人の矜持を思い出せ」とお叱りを受けた

同じく中心メンバーで資料のビジュアル制作を担当した、コンテンツ産業課総括係長の今村啓太さん
同じく中心メンバーで資料のビジュアル制作を担当した、コンテンツ産業課総括係長の今村啓太さん

今村 一方で、限界も感じています。反響を返してくれる方々のリアクションは批判も含めて受け止めやすいのですが、本当はリアクションを起こさない、関心のない層こそ大事だと思っています。このテーマに無関心だったり、現状の問題を知らなかったりする人たちにどう発信していくかは今後も課題です。

駒崎 確かにそうですね。リアクションの中には「見ている世界が狭過ぎる」といった批判もあったようですが、そうした批判への反論はありますか?

須賀 そういった意見もすべて今後の材料になるので、反論しようという気持ちはありません。ただ、一つ言いたいのは、むやみに対立や不安をあおる意図はなくて、民主主義国家だからできる前向きな合意の形成をしたかったんです。全世代にとって納得できる新しい解答を見つけられるとしたら、今ならまだ抜本的改革に間に合うと。

駒崎 あくまで前向きな投げかけにしたかったということですね。

須賀 はい。でも、率直なご意見はすべて最高の勉強材料になりました。今までネット上の意見をリサーチ対象にすることはほとんどなかったので、ツイッターなどで拡散されたコメントを拝見するだけでも新鮮でした。

駒崎 クールジャパンを推進していた須賀さんなのに?(笑)。ネット上の意見はあまり見てこなかったんですか。

須賀 スミマセン。長らく私たち役人がとってきた根本的なスタンスとして、自分たちで勝手に問題を設定し、仮の解答を用意し、投げて終わり、にしていたんだと思います。だから、国民の皆さんと双方向に意見を交えるという発想ってほとんどなかったんです。

駒崎 確かに感じるのは、今回のように官僚が国民とある種の対話を通してラーニングしようという動きは、これまでほとんど皆無でしたよね

須賀 そう思います。

駒崎 いつも勝手に決めて、勝手にやってるという印象です。そして、我々が評価をしようと思うころには、決めた本人は担当者交代や異動などでもういなくなっている。

須賀 なぜそうなってしまうのかというと、隙のない答えもセットで示すことこそ役人の仕事であるという意識が強いからなのだと思います。今回の件で、ある官僚OBからお叱りを受けたのですが、いわく「役人の矜持を思い出せ」と。問いかけだけで終わらせるとはけしからん、無責任である、ということです。いかに今回やらせてもらった挑戦がレアケースであるかということですね。

駒崎 いい流れだと思います。政策というものは首尾一貫し、実行まで官僚が責任をもってやるべきであるというのがこれまでの常識でしたが、もうそれでは有効に機能しなくなっているので。官僚から「問いかけのみ」もアリなんだ、という認知の転換を起こしてくれたことが僕はうれしかったですね。

須賀 と、分かってくださるとうれしいのですが、まだまだアレルギー反応を示す人のほうが多数派かもしれません。

駒崎 国民側の受け取り方も、より“自分ごと”になると思います。上から完成品を投げられるだけだったら、「ふーん、君たちが作ってやろうとしていることね」という感覚で受け止めがちですが、途中段階のやわやわ状態で投げられて一緒にこねるとしたら、途端に「俺たちの政策」になる。僕は、“政策のIKEA効果”と呼んでいるんですが。

今村 北欧家具のIKEAですか?