夫婦は共に働き、共に育児や家事をする――。この意識は、ここ何年かで若い世代を中心に随分と普及したのではないでしょうか。なのに、子育て世代がモヤモヤを抱えたままなのは、取り巻くルールが旧時代のままだから? この連載では、親になったからと受け身にならず、前向きに自分の人生を切り開こうとしている人を紹介していきます。一人一人の小さな変革でも、社会を変えるうねりになるかもしれません。

 前回に引き続き、文部科学省で働く2児の官僚パパ、西隆平さんを紹介します。「家庭内の育児家事にまつわることは、夫婦二人でやっていくもの」との意識が強い西さん。子育てをポジティブに楽しむ背景には、保育園や近所でできた“パパ友”の存在がありました。

■前回の記事 「2児の官僚パパ お迎え時間の制約で生産性アップ」

今回のDUALなヒーロー

西隆平(にし・りゅうへい)さん。33歳。東京世田谷区で、3歳と0歳の息子と妻との4人暮らし。京都大学工学部・大学院工学研究科卒業後、2009年に文部科学省に入省。高等教育局専門教育課課や研究開発局宇宙開発利用課を経て、現在は、初等中等教育局 国際教育課専門官。2020年度から学習指導要領が改訂され、小学校で英語が教科となることに向けた教材開発や体制整備の支援、日本語能力に課題のある外国人の子供への支援などに携わる。

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職場や保育園など周辺環境がパパの育児を左右する

 男性がどれぐらい育児に関われるかは、周辺環境に影響されるところは大きいと思います。僕のいる職場なら、「今日は保育園のお迎えの日なのでお先に失礼します!」「朝の保育園への送り担当なので、早朝対応は基本的に無理です」などと、わりとはっきり言える空気があります。

 先輩や同僚に子育て世代は多いし、自分と同じような共働きの立場で、仕事もバリバリこなしながら家事育児をしている人も多いです。日常の雑談で「子どもが熱を出した」「大変だよね」と父親同士で話もします。息子が手足口病とロタウイルスに感染したときは、「あの感染症はこういう特徴がある」とか「こういう場合に大人にもうつるから気を付けて」などと、具体的なアドバイスをもらえたりもしました。

 父親が育休を取る例も珍しくはないです。うちは、妻と「どちらが育休を取得するか」との話し合いをした結果2度とも妻が取る形にしましたが、同期にも同僚にも男性が取った例はあります。

 やはり残業は多いですが、組織全体に働き方改革や、ワーク・ライフ・バランスの意識も広まってきています。数年前から全省庁で、早い時間に仕事を終えて夏の明るい夕方時間を活用しようと「ゆう活」という取り組みをしているなど、まずは残業削減や業務効率化をしてなんとかしようとしています。日本全体でワーク・ライフバランスが問われる中で、国家公務員もしっかりと取り組まないといけないですよね。

 業務は尽きないので実現可能かは置いておいて…。父親で、今は子育て中であることに好意的な空気があり、組織としても旗を振ってくれているのは違います。理解があるから、こちらも言いやすい

 とある企業に勤める友人は、「子育ては理由にできない。仕事を持ち帰りにして保育園のお迎えに行くことはあるけれど、会社にはそうとは言ってない。ホワイトボードに『○○で打ち合わせ→直帰』と書いているだけ」だそうです。こういう形だと、1回のお迎えに行くにもストレスが伴ってしまいますよね。職場文化に引きずられてしまうのは、すごく分かります。

 本来は、お父さんも「子育て中なので帰ります!」と堂々と言えないと意味がないですし、変わらないんです。こういう雰囲気や職場文化づくりにも貢献していきたいなと思います。