遊んだ瞬間にダサくなる。スーツには完成形がある
日経DUAL編集部(以下、――) オシャレは感覚的なものではなく、メンズファッションには基本原則があるという前回のお話にはハッとさせられました。今回はビジネスシーンや冠婚葬祭の場でオシャレになれるスーツの着こなしについて、具体的なコツを教えてください。
MBさん(以下、敬称略) スーツについてお話しする前に、日常着について少し説明させてください。多くの人が勘違いしていることなんですが、実は日常着用に作られている服って、一つも存在しないんです。例えば、スウェットパンツやスニーカーはスポーツ用に作られたものだし、ミリタリージャケットは軍用に作られたもの。そして、コートはもともとドレス用、マウンテンパーカーは登山用です。このように、すべて違う用途で作られたものを、ごちゃまぜに組み合わせるのが日常着なんです。
もし、バランスを無視して一方向に突き進み、全身アウトドアスタイルだと山登りの格好になってしまいますし、全身ミリタリーだと軍人になってしまいますよね。日常着はいろんなものを混ぜるからこそ、バランスが大前提になるわけです。だからこそ、前回ご紹介した「ドレスとカジュアルのバランスを考える」が大原則となるんです。
逆にいえば、登山着にバランスは関係ありません。山の変わりやすい天候に対応するため防水性や防風性が必要だったり、口元から体温が奪われないように襟を高くしたり、ミッションに応じた目的が明確に存在しています。そこにファッションのバランスなんて必要ない。山登りするための服という「正解」があるのです。
それはスーツも同じことです。ドレスという一つのジャンルなので、完成形があってしかるべき。そこに遊びを加えると完成度が下がるので、その瞬間にダサくなるのです。
―― スーツで遊ぶとは、具体的にどういうことですか?
MB 例えばシャツの一部にチェックが入っていたり、ボタンホールに赤の糸が入っていたりするのを選ぶ人が結構いるのですが、ああいうのはあまりよくないですね。完成形であるモノトーンの無地から離れれば離れるほど、全体の統一感が失われてしまいます。