オランダ流・実現するためにどうするかを考える方法
—— 遠藤さんはオランダでお嬢さんを出産し、3歳まで子育てを経験されています。現地では、保育園や公園の遊具のデザインなども手掛けています。オランダでの遊び場の安全性への考え方はどんな感じですか?
遠藤 オランダでは地域の児童公園などにも、デザイナーが設計したユニークな遊具がたくさんあるんです。その分、ものによってはリスクが少し高くなる遊具もあるのですが、それをデザイナー、地域、行政、施工業者などが話し合うことで、実現化していきます。
私がオランダ時代に保育園の遊具のデザインを依頼されたときの例でいうと、まずは「子どもが思い切り弾けて遊べるもの」を考えてほしいというオーダーでした。そこでとにかく子どもたちが身体全体で楽しめるようなデザインを提案したんです。ただし、リスクという点ではいくつか課題もありました。それを今度は、万が一の補償を請け負う保険会社がひとつひとつ検証して、起こり得る事故を分析してくれるんです。「ここをこう改良すれば、事故が起きたときにいくらまで補償する」というように。
結果的に、そのデザインは実現化しませんでしたが、ステークホルダーが頭を寄せ合って議論を重ねながらちょうどよい折り合い地点を見つけるという経験になりました。オランダでは、社会全体にそういうシステムが根づいているんです。
今泉 まさに私たちがこれから目指したい方向ですね。作り手だけで考えるのではなく、運営者や行政や利用者である親たちも、子どもの豊かな遊びと安全を両立させるためにどうしたらいいのかをどんどん議論できたらいいと思います。