自分で助けに行ってはダメ!役割分担し、速やかに救助の手配を

――では、最後に子どもが溺れそうになったときに大人がやるべきことを教えてください。

【水難事故に遭ったときの手順】

 1 溺れた人に、背浮きをさせる
 2 救助隊「119番」に通報する
 3 身の回りの浮力体を投げる

田村 これらを1人でやろうとすると、間に合いません。できるだけ多くの人に声をかけ、役割分担して実行してください

 1人は、子どもに背浮きの指導をします。運動靴を履かずに溺れたときは両手を広げて頭上に伸ばすように、靴を履いたまま溺れたときは、ヒトデや星型のように両手を真横か斜め下に伸ばし、足を軽く開くように声をかけてください。

 1人は、救助隊を呼びます。携帯電話で「119(消防)」にダイヤルします。119が思い出せなかったら、「110(警察)」や、「118(海上保安庁)」でもOK。電話がつながったら、「どこで溺れたのか」ということを正確に伝えてください

 もう1人は、浮力体を投げます。身の周りにあるものの中から浮きやすいものを見つけ出し、溺れている子どもに声をかけながら投げてあげてください。そのためにも、身の周りの浮力体には何があるかを、日頃から知っておくことが大切です。

 その他の人は、子どもの姿を見守ること。救助隊が来たらすぐに場所を指示できるよう、子どもから目を離さないように。そのとき、「今、助けを呼んだからもう少し頑張れ」と励ましてあげてください。

 絶対にやってはいけないのは、自ら海に飛び込んで助けに行こうとすること。子どもを助けに行こうとして、結局2人とも溺れてしまうという救助死という事故は少なくありません。プロの救助隊なら助けられた命が、親が助けようとしたために助からなくなってしまうということも。確実に命を救いたいのであれば、自分が行くのではなく、ここで紹介した3つの手順で一刻も早く救助を呼んでください。

 2017年3月31日、新しい学習指導要領が告示され、小学校高学年の水泳領域に「安全確保につながる運動」という新たな内容が加わりました。水泳における「安全確保につながる運動」とは、呼吸を続けながら長く浮く技能を身につけるための運動のこと。「背浮き」は、この中に含まれます。今後、水泳授業の中で、背浮きのような「安全確保につながる運動」を指導することになります(新学習指導要領施行は、幼稚園は30年度、小学校は32年度、中学校は33年度から)。

(取材・文/井上真花 写真/大橋宏明 イラスト/三井俊之)