救助を待つ間、浮き続けるための「背浮き」
――まず「浮いて待て」について教えてください。
田村さん(以降、敬称略) 「浮いて待て」とは、溺れたときに、背浮きしたまま救助を待つサバイバルスイミング法。海や川で溺れたとき、通報してから消防の救助隊が駆け付けるまでに約8分30秒かかります。その8分30秒間を浮いて待つために、「背浮き」による「浮いて待て」を身体で習得する必要があるのです。
――「背浮き」だと、なぜ溺れないのですか。
田村 水の比重は1.0で、人が空気を吸うと比重は0.98。空気を吸うと人は水よりも0.02(1.0-0.98)軽くなります。つまり、空気を吸うと体全体の2%だけ水の上に出すことができます。そして、背浮きをすると、鼻や口の部分がその2%になるので、鼻や口で呼吸ができるようになります。
背浮きをせずに「助けて!」と手を上げると、水面より上に出た手の部分が2%になり、顔は沈んでしまいます。この状態では呼吸ができませんから、溺れてしまいます。
とはいえ、「背浮き」はすぐにできるものではありません。ある程度、慣れと練習が必要です。海に行く前に、プールなどであらかじめ背浮きの練習をしておくとよいでしょう(背浮きの練習方法については、「水辺の事故で生き抜く「浮いて待て」をプールで実践」の記事をご覧ください)。