Hさんからの後日談によると、そもそも家族3人で寝ていたベッドを取っ払い、「寝室に布団を2枚敷く」スタイルに変えたそうです。この環境変化によって、酔っぱらった夫が自分の布団にどんな状態で滑り込もうが、別の布団で子どもと寝ているHさんに支障はないので黙認できるようになったとか。加えて、「お酒を自由に飲んでも構わない。ただ、朝の保育園の送りは必ず行ってもらう」と夫と話したそう。

素直にぶつけられて、相手も聞いて応じる意思があれば良い段階

 夫婦間のコミュニケーションにおいて、注文の仕方が大事です。

 特に夫は、iPhoneに内蔵されている「Siri(※音声による操作や検索などを行うソフト)」と同じと考えるといいと思います。複雑過ぎる指示では、Siriは対応してくれませんよね。

 注文が漠然としていてもダメ。ウチの妻の指示も、大まか過ぎて分かりにくいことが少なくありません。例えば、「私ばっかり大変! もう少し家事・育児を協力してほしい」との要望だと、では具体的にどこから手をつけると妻の不満がいち早く解消されるのかが分かりません。

 より具体的に、「○時~○時が育児家事のピークタイムだから、この時間に家にいるようにはできない?」といったふうに言ってくれると、なるほど、となります。

 そこまで自分自身が相手へのニーズを的確につかめていなくても、気になるところがあったとき、素直に言い合えるだけで楽になるとは思います。

 率直にぶつけられて、相手も聞いて応じる意思があれば夫婦は十分に良い段階ではないでしょうか。「何が問題なんだろうね…」と2人でもう一度考えることができますから。

 互いの落としどころが見つかったら、「許せないこと」ではなくなります。僕が妻の許せないところを聞かれて、「何もない」と答えたのはそういうことです。

 不満があるのに我慢したり、諦めたりして言わず、性格の不一致などと判断して別れに至るといった観点は、僕にはナイですね。

(取材・構成/平山ゆりの 写真/柳沼涼子、片桐寿憲<タイトルバナー>)