そう考えると、ライフスタイルをすべて改善してほしい! との発注は、「不可能」との結論に行き着いてしまいます。「飲みに行かないで! お酒をやめて! 早く家に帰ってきて家でごはんを食べて! 毎晩きちんとシャワーを浴びて、早い時間に寝て!」との要求だと、「え…? そんな人はもう僕ではないよね? キミは誰と結婚したの?」となってしまいます。

 Hさんには、酒好きの夫にまつわる諸問題の中で、「何をされることが一番嫌なんですか?」と聞きました。話を聞いていると、気に入らない素行を色々挙げているけれども、何が最も嫌なのか自分でも整理できていないように思ったからです。

相手の行動の何が自分は嫌なのか。ピンポイントで導き出す

 夕飯を一緒に食べたいのか。帰宅後に手を洗わないけれど別のところで寝てくれれば平気なのか。自分が譲れない部分はどこなのか。そこをピンポイントで明らかにすることが、まずは大事。

 聞くと、「深酒によって翌朝に支障をきたすこと(起こさないと起きない、保育園の送り時間に遅刻するなど)」「帰宅した格好のままで同じベッドに寝られること」が最も嫌なのだ、と分かりました。

 次は、敵の譲れないところ…つまり、夫の細かな希望を知ることが重要です。「外で飲むのが好きなの? ○○さんと飲むのが好きなの? あのバーに行きたいの? もう少し自宅近くで飲めば早く帰れるの? 記憶をなくすほど飲むのが気持ちいいの? もうろうとした状態で布団に滑り込むのが心地いいの?」というふうに。自分の要望に優先順位をつけ、相手も優先順位をつけたら、最も「Win-Win」になれる良好な着地点に行き着けるわけです

 改善のためのポイントとしては、相手の意思に委ねるのではなく、環境によって変化を起こせないか考えるのが先

 「帰宅した格好のままで同じベッドに寝ること」をやめてほしいなら、「シャワーを浴びてから寝て!」と夫の意思に働きかけるよりも、寝室以外の別の場所に布団を敷き、この布団に寝るように決めておくほうが解決は早い。人は変えられないけれど、流れる水の道筋を、仕切りを立てたり穴を掘ったりして変えることは難しくありません