我が家は現在、共働きではない。長期の休み、子どもは暇である。退屈だーと言っている息子たちを見て、私はしめしめと思う。「どうだ退屈だろう、そんな時こそ脳みそが育つのだ、わはは」などと言ってみるが、しかしせっかくの長い休みなので、遠出したい。

 オーストラリアはそこらじゅうが国立公園なので、車でどこまでも走れば必ず何かがある。7月は南半球の冬休み。今回はパースからひたすら南東に走って、古い港町・アルバニーまで行った。普段暮らしているパースは大陸の西岸でインド洋に面しているが、アルバニーのある南岸はサザンオーシャン、つまり南極とオーストラリアの間の海に面している。丸っこい岩山が海のすぐ際にまで迫り、頂上からは広大な海岸線が望める。サザンオーシャンは野生的で、力強い。

巨大なスケールの自然の中で、自由な気持ちになる

 アルバニーの海岸沿いには、ウィンド・ファームがある。風農場の名の通り、風力発電機が並んでいる。西オーストラリアの冬は雨の季節なので、日に何度も通り雨が降る。ウィンド・ファームのブッシュの中を散策していると、パラパラ降ってきた。岩山から見下ろす眼前の海は瞬く間に雨に烟り、南極海の暴風圏から押されてきた巨大なうねりがどっしゃんどっしゃん足元に寄せてくる。「ママ、砂が消えてる!」と次男が叫ぶので見れば、あんまり風が強いもんだから波が浜をぜーんぶ飲み込んで、砂ごと混ぜっ返して山に打ち寄せているのだった。

 この辺りの海岸線は、南極大陸とオーストラリア大陸がガチーンとぶつかった時の熱でできた変成岩。で、そこからまた南極がちぎれてこの海ができたわけだから、流れている時間のスケールが違う。人間なんかまるで相手にされていない。とても自由な気持ちになる。

『左』:アルバニーのウィンド・ファーム。これでアルバニーの町の電力の8割を賄っている。山裾まで押し寄せる荒波。/『右』:高さ40メートル長さ600メートルのツリートップウォーク。森の空中散歩。床はあみあみで透けてます。なんと車椅子でも通れます。
『左』:アルバニーのウィンド・ファーム。これでアルバニーの町の電力の8割を賄っている。山裾まで押し寄せる荒波。/『右』:高さ40メートル長さ600メートルのツリートップウォーク。森の空中散歩。床はあみあみで透けてます。なんと車椅子でも通れます。

『左』:ポロングラップ国立公園にて。向こうに見えるのはスターリング山脈。「青春の旅」、長男。/『右』:「ミクロの旅」、次男。
『左』:ポロングラップ国立公園にて。向こうに見えるのはスターリング山脈。「青春の旅」、長男。/『右』:「ミクロの旅」、次男。