「にんじん、頑張れ」と子どもが声をかけてくれた

―― 安易なハッピーエンドにならないのもこの作品の特徴ですが、愛に飢えた“にんじん”少年は、最後に強く生きていくことを誓う、ということになるのでしょうか。

大竹 後半、それまで自分に振り向いてくれなかった父が、“にんじん”と対話をする場面があって、そこでお父さんは、お母さんがなぜ自分にこういう仕打ちをするのかを話してくれるんです。それがきっかけで“にんじん”は、人間って誰もが一人で、孤独を抱えているんだと分かるんですね。最後は少年から大人になる第一歩として、「僕が選んだ一人だ、昨日までの一人じゃない、少し足が震えてるけど、また新たな物語に向かっていくぞ」というような内容の歌詞を歌いながら、踏み出します。音楽には希望があふれて、最後は大コーラスで「歩いていけ、さあお前の明日へと」というようにみんなで応援する。胸の熱くなるエンディングだと思います。

―― 親子で楽しめる作品とのことで、38年前には子どもの観客の素直な反応があったりもしたそうですね。

大竹 カーテンコールのときに子どもが舞台前まで駆け寄ってきて「にんじん、頑張れ」と声をかけてくれたり、帰りの電車の中でお子さんが「にんじん、これから大丈夫かな」と心配していたというおはがきをいただいたこともありました。この作品では自分とあまり年齢の変わらない少年がいじめられるけれど、最後には人の厳しさを知り自立する姿を見て、何かを感じてもらえたらうれしいですね。舞台は映像とはまた違って、エネルギーがダイレクトに伝わってくるものなので、お子さんからより素直なリアクションがあるのではと思います。

―― 大竹さんはすでに成人された二人のお子さんがいらっしゃいます。今、子育て中のパパ・ママにとって、一番の悩みは子どもたちと限られた時間の中でどう過ごすかということかと思いますが、大竹さんはお子さんが小さいとき、何か意識していたこと、習慣にしていたことはありますか?