学ぶための時間を確保するためにはやはり学校!

 ではどうやって、語学力やプログラミング力を身に付けるかが問題ですよね。英語に限らず、数学でもなんでもそうなんですが、1万時間勉強したら自在に駆使できるようになる、と言われています。1日3時間勉強したとして、10日で30時間、100日で300時間、1年で約1000時間。ざっと10年かかる計算です。ただ、この1日3時間学び続けることは、非常に大きなエネルギーが必要で、モチベーションを保ち続けるのも大変です。ただ「ネイティブ並みにしゃべれるようになりたい」「ゲームソフトが作れるくらいのプログラミング力を付けたい」というだけで、1日3時間を確保することは難しいでしょう。

 そこで、学校だと考えました。学校は毎朝8時からスタートして午後3時ごろまで、1日5~6時間を費やす場所となります。それだけの時間を確保できる場所なんです。実際に、入学当時はほとんど英語ができなかった子が、1年後の今では普通にネイティブの先生と会話をしています。

 さらに、こうして習得した国語、英語、プログラミング言語は、使えることがゴールではありません。これらはあくまで武器であって目標ではないんです。武器を得た後、そもそも何をしたいかが大切なのです。だから、授業の中には、科目をクロスオーバーさせている授業もあります。例えば、顕微鏡で葉脈の細胞を見たとします。それが美しいと思い、再現したいと感じたら、今度は美術として、細胞を絵の中で描いてみるということが起こります。そこでは科学と芸術はつながります。文系・理系・芸術系という垣根を作らずに、科目間の境界がないことで、自分のしたいことをもっと伸ばしていくことができます。だから、科目間の境目がないことも、YES International Schoolでは大切にしています。

 このスクールでは、模範解答よりも、突拍子もないことでも自分のオリジナルのストーリーを作ることが評価されます。はじめのうち子どもたちは、先生の喜びそうな答えを言ったり、絵を描いたりしたこともありました。模範解答がない、と言って、おうちで泣いていたという話も聞いたことがあります。間違いが、みんな怖いんですね。でも、間違いを恐れて、正解だけを求める人では、生き残ることができません。間違いを恐れずに、自分だけのストーリーを考られる人に子どもを育てることがこのスクールの目標です。

(取材・文・構成/関川香織 撮影/坂斎 清)