フィリピン人講師を活用したオンライン英会話サービスを手がけるレアジョブの創業者、加藤智久さん。現在、加藤さんは、妻と2人の娘とともに、フィリピンを拠点にキャリアパパ生活を送っています。4歳と2歳の子を持つ加藤さんは、わが子の語学教育をどう考えているのでしょうか。また、英会話サービスを手がけてきた加藤さんが考える、子ども向け英語教育の理想的なあり方とは。オンライン英会話の効果的な活用法についても伺います。

【インタビュー上編】
どんなに事業が成功しても、頭を掠めた空虚感

温かいフィリピン人は英語講師に最適

日経DUAL編集部(以下、――) 現在、フィリピンで2人のお子さんを育てておられる加藤さんですが、お子さんの語学教育についてはどう考えていますか。

加藤智久さん(以下、敬称略) 今、子どもは英語だけで育てています。「親が複数言語を話すと子どもが混乱して発話が遅れる」という話を聞いたからです。僕は日本語のみを話し、妻は英語のみを話せば混乱はしないそうなのですが、妻はフィリピン人で日本語は話せないので、それでは会話が成り立ちません。まずは英語だけに絞ることにしました。

 ただし、全く日本語を話せないと日本人としてのアイデンティティを持てないので、そうもしたくないと考えています。今後、フィリピンにある日本人学校に行かせてみたいという思いもありますし、高校までのどこかの時点で、日本の学校教育を経験させたいとも考えています。今の日本の学校教育は、東アジア的な「知識詰め込み型」の教育と、欧米的な「探究心やプレゼン能力の重視」の教育のちょうど中間にある印象です。案外、バランスは良いんじゃないかと感じているんです。

―― 加藤さんは、日本とフィリピンを往復する形で仕事をされてきました。お子さんを「グローバルな人材に育てる」ということは意識していますか。

加藤 僕は、子どもを「どうやってグローバルに育てよう」と考えたことは全くないんです。そもそも僕が日本人で、妻がフィリピン人とイラン人のハーフ。またフィリピンでは親戚が集まる機会も非常に多く、そうすると自然と色んな国の人たちが集まるので、子どもを取り巻く環境は十分グローバルだなと。むしろ、先ほども言いましたが日本人としてのアイデンティティーを持たせるにはどうしたらいいのかな、ということを考えています。

―― レアジョブでは、フィリピン大学の学生や卒業生を多く講師に起用しています。英会話講師としてフィリピン人の良さはどんな点ですか。

加藤 フィリピン人のホスピタリティーやサービス精神は素晴らしい。相手の気持ちをくみとりながら、自分の考えを伝えるコミュニケーション能力もとても高い。そのためフィリピン人の英語講師は、「英語をしゃべるのが怖い」、「間違ったら嫌だな」と感じている日本人に対して、温かく、根気よく、足りない言葉を付け加えながら会話してくれるんです。英会話講師としては非常に適した人材だと思います。