日常的な英会話教育と異文化体験を組み合わせる

―― では、加藤さんが考える、理想的な子どもの英語教育法とはどんなものなのでしょうか。

加藤 親の立場から子どもの英語教育を考えると、日常的な英会話教育と、リアルな異文化体験、この二つを組み合わせるのがいいと思います。異文化体験は、もちろん海外留学させるのもいいですし、そこまでお金をかけずとも、訪日外国人や日本在住の外国人と交流できるイベントなどを活用するのも一つの手です。子どもが日本語を話せない人と出会い、英語の必要性を実感する。そのうえで子ども向けオンライン英会話で練習する。オンライン英会話で伸びてきたらまた体験の場に連れて行き、英語をもっとうまくなりたいと思ってもらう。この循環をデザインしてあげる必要があると思います。

 大人であれば、仕事で英語を使う場面があったり、自主的に外国人と交流できる場所へ行ったりすることで英語の必要性を実感できます。一方、子どもは自発的にそういうところには行けないし、学校教育だけではカバーできない。親がその機会を作ってあげる必要があるのかなと思いますね。

―― 子どもに英語を学ばせるタイミングは、やはり早ければ早いほうがいいのでしょうか?

加藤 冒頭で、「親が二言語だと子どもの発話が遅れる」という話をしましたが、既に日本語を話し始めた子どもに対して英語を教えるぶんには発話の遅れの問題はないと思います。ただ、過度に早期から英会話能力を高める必要もないと僕は考えます。というのも、「年齢が上になるにつれて英語が習得しづらくなる」ということを示すデータは、発音を除けば今のところ存在しません。むしろ、長期的な目線で見れば、重要なのは英語力よりも、日本語で仕事をこなせる力であったり、日本人以外とも仕事をしてみたいという気持ちであったりするからです。

 例えばフィリピンでは、母語はタガログ語ですが、早くから英語を学ばせていて、数学の授業は英語で行われています。そのため英語力は非常に伸びるのですが、肝心の数学が伸びづらい。それじゃ意味がないですよね。

―― しかし、英語の必要性は今後さらに高まりますよね。

加藤 それはそうです。今から30年前は、コンピューターは一般的ではありませんでしたが、今はコンピューターなしで仕事をすることは考えづらい時代です。同様に、今から30年後には、英語を使わずに仕事をすることは考えづらい世の中になっているでしょう。でも、学習の順序としては、まずは仕事の能力を伸ばし、あとから英語を学んだほうが、その反対よりもいいと思います。仕事でコンピューターが必要だからといって3歳からプログラミングをやらせる必要はない。ただし、コンピューターで色々自分でもやってみようと思えるように育てることは大事。英語も、それと同じです。

―― 最後に、レアジョブのようなオンライン英会話を使って、効果的に英語力を高める、おすすめの方法があったら教えてください。

加藤 英語能力を伸ばす際に土台になるのは、「海外で働きたい」「異文化の人と交流したい」といった、「思い」の部分です。これを「非認知能力」といいます。非認知能力がある人ほど、英語力が伸びるので、幼少期はそこを育てることが最優先です。

 ですから、お子さんがオンライン英会話を活用するなら、「英会話を通して外国人と仲良くなった経験を持つ」というゴールを達成できれば、まずは十分。講師とのやりとりを通して、「この先生とまた話したい」「この先生と話せてうれしい」といった気持ちを持つことに意味があるんです。そうやって、外国人と楽しそうに英語で話せる子どもが増えたら、20年後、30年後は、日本人はもっと外国人と仲良くなれるだろうし、ビジネスの面でもよりグローバルになると思います。

(構成/星野ハイジ 企画・写真(加藤さん)/日経DUAL 加藤京子)