子どもの感情を視覚的に共有

 朝は、15〜30分程度の「モーニングトーク」と呼ばれる時間から始まる。先生も子どもも一緒に円になって座り、今日何をするのかをみんなで話し合う。先生が主人公ではなく、子どもがメーンの話し合い。大人は子どもの話を拾い、つないでいく役割に徹するのだ。

 今日のことだけではなく、日々のつながりを感じてもらう時間でもあるそうだ。子どもにとって「昨日」と「今日」のつながりはなかなか理解しづらいもの。各教室には、曜日ごとのポケットのある壁掛けがあるが、その曜日に入っている人形を一緒に確認しながら移動することで昨日からの繋がりと変化を視覚的にも感じ、そして今日にと目を向けることができる。「今日はここに行くよ」ではなく、今日はみんながどこに行きたいのか、どうしてそれがいいのか、お互いに話し合って、その日の過ごし方を決めるのだ。

曜日ごとに違った人形が入っているタペストリー。この人形を出し入れしながら、子どもたちと日にちが変わったことを確認する
曜日ごとに違った人形が入っているタペストリー。この人形を出し入れしながら、子どもたちと日にちが変わったことを確認する

 子どもの感覚と実際の時間や感情などを結ぶこうした視覚的な工夫は他にもあり、登園すると子どもたちは「マイ・フィーリング」と呼ばれる感情を描いた壁掛けに自分の名前の書かれたクリップを、その日の感情に合わせて留める。

 「もちろん登園したときに保護者の方ともその日の体調のことなどお話ししますが、子どもが自分で選ぶことで、見えなかった感情も伝わってきます。“悲しい”顔を選んだ子が、実は朝お母さんとケンカしちゃっていたり、靴がうまく履けなかったりという気持ちで引っかかっていることもあります。“ただなんとなく”気分が晴れないときもあります。大人だってそういうことありますよね。そのクリップを見て、保育士と話したり、みんなで話し合ったりすることもあります」

写真左:表情でその朝の気分を示すマイ・フィーリング。名前の書いてあるクリップを自分でその日の感情に合わせてつける/写真右:園児1人ずつに1つずつ自分だけのお人形ということで渡されるマイ・ドール
写真左:表情でその朝の気分を示すマイ・フィーリング。名前の書いてあるクリップを自分でその日の感情に合わせてつける/写真右:園児1人ずつに1つずつ自分だけのお人形ということで渡されるマイ・ドール

 この「マイ」がついた取り組みは、他にも少人数に対して保育士が対話を一緒にしながら絵を描いていく「マイ・ペインティング」、子どもの生まれてからの年月分のビーズをつないでいく「マイ・ビーズ」などもある。どれも、一人一人に目を向け、自分の感情や成長を大事にしてもらうための取り組みだ。

 「茶々では、デンマーク、ドイツ、フィンランドなど毎年希望者への海外研修を行ったり、理事長も国内外の保育を広く見学し、研究しています。その中で良いものを取り入れてきています。日本の保育は、基本的に集団保育や設定の幼稚なものもあります。しかし個人を大事にする海外の保育に学べることがたくさんあると思うのです。モンテッソーリや北欧の教育の考え方も全部まねするというより、子どもにとっていい影響のあることを茶々保育園グループ流に取り入れています

生まれてからの年月を、1年=大きなビーズ、1カ月=小さなビーズ、をつけていくマイ・ビーズ
生まれてからの年月を、1年=大きなビーズ、1カ月=小さなビーズ、をつけていくマイ・ビーズ