「命・心・体」をテーマにした講演や子育て学講座、執筆など幅広く活動するチャイルドファミリーコンサルタント、バースセラピスト、助産師のやまがたてるえさん。中1、小5の姉妹の母でもあり、松戸市教育委員会の教育委員としても、子どもたちの健やかな成長を応援しています。
 産後から熱心に情報収集をし、子どもの発達・成長段階をある程度把握しながら、成長を見守ってきたという人も、子どもが小学校に上がると手がかからなくなってきたり、仕事で期待される責任も増えてきたりして、「気づいたら、子どもがあっという間に次のステージに成長していた」と、月日が経つ早さを惜しく思うことがあるでしょう。新連載『見守る・寄り添う 小学生からの子ども学』では、大切な学童期の子どもの成長段階を見守り、いざというときには頼りになる存在として子どもに寄り添えるよう、小学生の親が知っておきたいこと、親の適切な関わりについて、やまがたさんからアドバイスをもらいます。

 今回は、子育て支援に関わるやまがたさんも経験した、「子どもの『学校に行きたくない…』、そのときに」。元気で学校に通っていたわが子に突然起こり得る、現代特有の複雑な背景について、専門家と親双方の立場からのアドバイスが優しく心に響きます。

ある日突然「学校に行きたくない…」と言われたら、あなたはどうしますか?

 毎日、お子様のことを一生懸命に考えながら過ごしていらっしゃると思います。親としての子どもとの関わりに「これでよかったのかな?」と、いつも振り返りながら、一喜一憂の日々だったりしますよね。

 私自身も同じ一人の親として、いつもそんな思いをしています。幼児期に離乳食を食べないとか、泣き虫で困る…とかそういう悩みとはまた違った悩みが学童期には訪れてきます。その大きな悩みの一つとして、「学校に行きたくない」という子どもたちの大きな悩みの壁にぶつかり、親として大きく葛藤しなくてはいけなくなるケースがあります。

学校に行きたくない = さぼり ではない

 多くの子どもたちは「学校に行きたくても、行けない」という状況にあることをたくさんの大人に知っていていただきたいと、いつも思っています。親をはじめ、昭和に子ども時代を過ごした多くの大人たちが、「学校に行かないという選択肢はなかった」という考えがあると思います。

 私もそういう一人でもありました。子どもが「学校へ行きたくない」というのに対して、「なんで学校へ行けないの?」とつい子どもを責めたくなっていきます。なんとか行かせようと、「お母さん(お父さん)の時代には、そんなこと言えなかったよ!」と叱咤激励してしまうことが多いようにも思います。

 不登校について考える大前提として、私たちが生きてきた時代と今の時代が本当に大きく変化していることを親たちがしっかりと感じていくことが大切です。10年、20年以上前に常識だったことが、今は非常識になったりしている現実。

 例えば、昔は待ち合わせ時間と場所をしっかり約束していないと出会えずすれ違うことだってありましたが、今は時間と場所さえざっくり決めれば、後は「携帯で」となっていますよね。他にも、数十年前は「部活中に水を飲むな!」なんて言われましたが、今「どんどん水分をとって部活に励むように」と言われたり。どんどん社会背景も常識も変化していく中で、子どもたちも多様な生き方をしていかなければならない。その中で起きる一つが「学校に行きたくても行けない」ということなのです。

「学校に行きたくても行けない」 予想される主な外的・内的背景

 ここではあくまでも「背景」という言葉を使います。その背景が、子どもの心に影響を与えている可能性があるかもしれないということです。病気の原因のように、「患部を特定し、即治療」というような扱いではなく、様々な背景が複数に絡み合い、結果「学校に行けない」という状況として表れる場合があると思ってください。

 これらは個人差もあり、絶対にそれが原因と特定されるわけではありません。色々な背景と状況がありますが、大まかな原因・背景を外的背景と内的背景として分けてお伝えしていきます。

【外的背景】

□ 学校(教育)そのものへの不安感、恐怖感、劣等感(学習面の伸びなやみ、何となく不安)~多くの子が「学校が怖い」と感じている
□ 先生への不安感や恐怖感(先生の声やしかり方、指導の熱意が別な受け取り方になってしまうこと、例えば異性の先生への不和感などが出る子もいる)
□ 友達関係での不安感、恐怖感(仲間外れ、悪口を聞いた、いじめなど)、友達との距離感がうまく取れない
□ 家庭における自分の立場や状況が不安定になっている
□ 学童などの放課後を過ごす場所や習い事での不安感などが、学校そのものに行きたくないということにつながるケースもある

【内的背景】

□ 性格因子(よく不安になる傾向、悩みやすい傾向、自分が悪いと自分を責めてしまう傾向、自分自身のやりたいことがあり強制されることが苦手な傾向、心のエネルギーが減っていて困難を乗り越えることが難しい傾向など)
□ 精神疾患の可能性(性格因子を超えて、精神疾患にかかっている可能性もあります)
□ 体調因子(微熱や腹痛など身体的に影響が出ているケース)
□ 発達的因子(例えば思春期などホルモンの影響が出る時期的な要因や、本人の持って生まれた発達傾向のなかで、他者との交流がゆっくり丁寧なものでなければ受け取りづらいケースや、視覚的や聴覚的に繊細な部分があって、環境そのものを受け入れることが難しいケース)