金魚すくいの金魚は最初の対処が肝心

 夏に飼い始める生き物といえば、やっぱり夏祭りの金魚すくいでもらう金魚ですよね。子どももやりたがるし、親もすくった以上飼わないわけにはいきません。簡単にもらえるだけに、飼育も簡単なのではというイメージがありますが、実は金魚というのは飼い続けるのが大変難しい生き物です。特に金魚すくいの金魚はとても弱くて、死んでしまいやすいのです。

 金魚すくいの金魚は、狭い水槽の中に入れられて、すくい網で追いかけ回されています。金魚にはウロコを覆う粘膜があるのですが、その大事な粘膜がすくい網によって剥がれてしまっていることが多いんです。粘膜は病原菌から体を守るためにあるのですが、それが剥がれてしまうと細菌が付着しやすくなる。さらに、家まで持ってかえるまでに長い時間がかかってしまうと酸欠状態になってしまいます。

 金魚すくいの金魚を飼うなら、とにかく最初の対処が肝心です。その処置次第で長く生きられるかどうかが決まりますので、大事なポイントを順に追ってご紹介します。

<金魚の飼育水を作る>
 まず大切なのは水です。ただの水道水の中に入れるのはご法度。バケツの中に水道水を入れて、カルキ抜きの錠剤を入れて塩素を中和してください。錠剤はペットショップやホームセンターなどで売っています。そこに、私がおすすめしたいのは一握りの塩を入れること。子どもの手でほんの一握り、10リットルの水なら20グラムほどで結構です。塩を入れる理由は、殺菌効果。繁殖業者の方たちも塩を使っているという話も聞きます。

 これで、金魚の飼育に適した水は出来上がりです。ちなみに水道水は日の当たる場所に1日くみ置きしておけば塩素は抜けますが、そんなに長時間金魚すくいの金魚を放置しておいたら死んでしまうので、最初はカルキ抜きを使いましょう。このとき、エアーポンプで水中に酸素を送ってあげられるとなおいいですね。

 金魚は水温の変化に敏感で、急に違う水温の水に大量に入れると、それだけで死んでしまうこともあります。まずは飼育水を張ったバケツに金魚を持ってかえってきた袋ごと漬けましょう。袋の水の温度とバケツの水の温度が徐々に近くなっていくので、そのまましばらく放置します。20~30分ほど経ったら、袋の中の水を少しずつバケツにこぼして、水を混ぜ合わせるようにしてバケツに金魚を放してあげてください。

<水槽を準備してセットする>
 あとは、金魚を飼う水槽を購入してセットすればいいのですが、必要なものがそろっている金魚飼育セットが手軽でいいと思います。水をきれいにするとともに酸素も供給してくれるフィルターがついていれば十分です。水底に砂利を入れると、水汚れの原因となる金魚の糞尿や残ったエサなどを分解してくれるバクテリアも定着しやすいメリットがある反面、汚れが砂利にこびりついて結局水汚れの原因になってしまいます。水替えのたびに砂利を取り出して洗えばいいのですが、手間もかかるので砂利は敷かなくてもいいと思います。

 金魚の水槽を置く場所は、玄関やリビングなど目につきやすいところにしてほしい。よく見えるところに置いておくことで、子どもも飽きることなく観察しやすくなりますし、親も楽しく飼うことができます。

 足元など低い位置に置いておくと、蹴飛ばしてしまう心配もありますし、何より横から観察することがしづらくなります。金魚は水温が下がる秋から冬にかけて病気になりやすい。代表的な病気は金魚の表面に白い斑点ができる白点病ですが、常に横から観察していれば異変にも気付きやすい。その場合はペットショップに相談して薬などをもらってください。

<金魚の世話をする>
 金魚の飼育において最も注意していただきたいことは、エサやりです。あまり大量に与えてしまうと、金魚の食べ残したエサが水の汚染の原因になってしまう。飼い始めたばかりで死んでしまうことになる原因の多くが、エサのあげ過ぎによる水の汚染です。与えたエサを金魚が食べきれているかどうかなど、様子を見ながら1日に1回か2回与えるようにしましょう。

 金魚を飼育するうえで一番楽しいことはやはりエサやりです。あげ過ぎに注意しつつも、エサをパクパク食べるところを一緒に観察しながら、親子で楽しいひとときを過ごしてください。

 また、フィルターが稼働していても水はやはり汚れます。週に1回など定期的に水を入れ替えるようにしてください。水の入れ替えは、水槽の水の3分の1程度が目安です。あまり多くの水を入れ替えると、急激に水が変化してしまい、金魚にとって負担になります。また、フィルターに付着している濾過細菌も死んでしまいます。

 水の入れ替えをしっかりやっていきながら、大体1カ月くらい、金魚が病気になることなく元気であれば、もうひと安心。夏祭りで持ってかえった金魚なら、夏休みを乗り切ることができればその後も長く生きてくれると思います。