夏といえば、やっぱり夏祭り。そして夏祭りといえば、金魚すくいです。出店を見つけた子どもが「これやりたい!」と言い出し、金魚をすくって持ち帰るご家庭も多いことでしょう。しかし、せっかく水槽などを飼いそろえたのに、金魚が数日もしないうちに死んでしまった…。そんな経験はありませんか?

 また、小学生のお子さんをお持ちのママ、パパなら、わが子が夏休みの自由研究のためにカブトムシやクワガタを飼育しようとしている、という人もいるでしょう。子どもにとって、生き物を飼うという経験は、教育上も大変意義のあることです。

 そこで、今回“生きものカメラマン”として知られ、『その道のプロに聞く 生きものの飼いかた』(大和書房)など生物の飼育に関する本を多数出している松橋利光さんに、夏に飼われることの多い生き物の飼い方について教えてもらいました。松橋さんは、もともとは水族館の飼育員でしたが、生き物好きが高じてカメラマンに転身。ご自身も様々な生き物を飼育してきた経験を基に、子育て世代に生き物を飼うことの大切さを訴えています。

 この夏、ぜひ親子で楽しく生き物を飼ってほしいと語る、松橋さんのお話をお届けします。

親子で生き物を飼うことは学びと経験になる

 私は幼いころから、そのあたりの公園や川にいる生き物を捕まえては飼ってきました。ヘビやトカゲ、カエル、イモリなど、爬虫類や両生類が好きでしたね。もちろん、カブトムシやクワガタ、カミキリムシなどの昆虫も自分で捕まえて飼っていました。

 ところが、身近なところで捕まえた生き物というのは、越冬させるのが難しいなど、色々な意味で手間がかかります。子どものころからたくさん生き物を飼ってきた中で、死なせてしまって悲しんだ経験は数知れません。それもあって、今では不必要に何でも生き物を飼ったりはしないようになりました。

 とは言いつつ、夏祭りなどで金魚すくいを見かけると、娘よりも金魚をすくって飼いたがるのは結局、私なんですが(笑)。

 一方、ペット用にブリーディングされた生き物は別として、自然保護の観点から身近なところにいる生き物を飼育することに否定的な人もいるのですが、自分自身の体験として、それは違うと考えています。生き物を飼うことの大きな意味の一つは、自然を身近に感じられるということ。自分たち人間が暮らす場所は、昆虫や爬虫類、両生類など様々な生き物と共生しているところなんだということを体感できるんです。自然を身近なものとして捉え、大切に思ってくれる子どもたちが増えることは、自然保護の観点からも重要なことのはずです。

 また、生き物を飼育するということは、その生き物の死も受け入れるということ。大切に飼育してきた生き物が死ぬという現実もまた、子どもにとっては大きな経験となり、命の尊さを知るきっかけにもなると思います。結果として、私のように軽々しくは生き物を飼えないという結論に至るのは、それはそれで意味があることです。

 とはいえ、子どもは生き物の飼育にすぐに飽きてしまいます。生き物を飼う中では、掃除など大変で面倒なことも少なくありません。そして親も子どもに「自分で飼うって言ったんだから自分で掃除しなさい!」と叱るだけになりがちです。逆に、結局親ばかりが世話をしているというご家庭もあるでしょう。でも、そこは親子で一緒にやることをスタート地点にしてほしい。

 エサをあげることは飼育の中でも一番楽しいことなので子どももやるのですが、それ以外の部分でも親が「一緒にやろうよ」と誘ってください。最低でも、手伝いをさせるようにする。親と子、どちらが主体的に世話をするのかということはそれほど重要ではありません。大切なことは、親子で一緒に世話をするということです

 とにかく私が伝えたいのは、子どものうちに「何でもいいから、生き物を飼ってほしい」ということ。そして、子どもが何か生き物を飼いたいと言ったら、ママやパパはそれを全力でフォローしてあげてほしい。その経験が、きっと大人になったときに生きてくると信じています。