「子どもに濃度の高い虫よけを使うのは危ない」は誤解

 虫よけの濃度が高くなり、効果持続時間が長くなったということは、しっかり塗ることで学校や保育園にいる間は(汗やプール、水遊びなどで落ちることはあるものの)、帰宅するまで塗り直さなくても効果が期待できるということになるだろう。

 しかし濃度が高くなると「小さな子どもに使うのは心配。副作用があるのでは?」という声も聞こえてくる。これに対し久住先生は
 「小さな子どもに強い薬を使いたくないという気持ちはよく分かります。でも、小さな子どもほど虫には刺されないようにしたい。厚労省は12歳未満に使うディートの濃度は12%までにすること、さらに濃度12%のディートを使っていいのは生後6カ月以降という推奨までしていますが、こうした推奨をしているのは日本くらいのものなんです。海外では生後2カ月目から、ディートの濃度30%の虫よけを使っていいとされているんです。ディートの成分が日本人にだけ毒性が強いというエビデンスはありません」と警鐘を鳴らす。

 注意点は「ディートは粘膜に直接触れることで、副作用が起きることはある、ということですね。小さなお子さんの場合、なめてしまう顔や手、足には塗らないほうがいいかもしれません。とはいえ、なめたくらいでは大きな影響はないでしょう。それでも心配な場合は、イカリジンの虫よけを使うといいでしょう」。

イカリジンの成分はこしょうと同等!

 「イカリジンはこしょう(ブラックペッパー)の辛みの成分、ピペリンに似せて作られた薬品です。しかも皮膚から吸収されにくく、もしされたとしても全体の6%程度しか吸収されません。また吸収された成分も主要代謝物(尿など)から速やかに排出されます」 。体に入ったとしても排出されるうえに、毒性も認められていないので、乳幼児にはイカリジンを使用するとよいのではないかと久住先生はいう。

 なお、ディートもイカリジンも、副作用としては「皮膚が赤くなったり、かゆみが出たりすることはあるといわれています。それぞれの体質に合うほうを使うといいでしょう」

大日本除虫菊(キンチョー)の「お肌の虫よけ プレシャワーPRO 80mL」(写真左)はイカリジン15%配合、虫よけ効果は最大8時間。 フマキラーの「天使のスキンベープミスト プレミアム 200ml」(写真右)もやはりイカリジン濃度を15%まで高め、虫よけ効果が6~8時間持続するとうたう
大日本除虫菊(キンチョー)の「お肌の虫よけ プレシャワーPRO 80mL」(写真左)はイカリジン15%配合、虫よけ効果は最大8時間。 フマキラーの「天使のスキンベープミスト プレミアム 200ml」(写真右)もやはりイカリジン濃度を15%まで高め、虫よけ効果が6~8時間持続するとうたう

エアゾールタイプはほとんど飛び散ってしまう

 ディート、イカリジンどちらを有効成分にする虫よけも、エアゾールタイプ(ガスが入った噴霧タイプ)、スプレー(ミスト)タイプ、ローションタイプなど様々な形状がある。エアゾールタイプはシューッと吹きかけやすく、つい手に取ってしまうのだが、実は効果が期待しにくいのだという。

 「エアゾールタイプの虫よけ剤は、大部分が大気中に飛んで行ってしまい、皮膚への付着量が少ないことが分かっています。それだけでなく、舞い散るために吸入してしまいがちです。できればまんべんなく塗れる液体(ローション)や、クリームタイプがお薦めですね。ただクリームタイプは使用後にべたつくので、小さいお子さんの場合、ローションや舞い散りの少ないスプレータイプがいいでしょう」

 日本の製品を見る限り、ローションタイプはあまり見かけないので、スプレータイプを子どもが吸い込まないように注意しながら使うのがよさそうだ。ただし、イカリジン成分配合の場合は、吸い込んでも大きな問題にはならないのは前述の通り。