30歳手前での自分探しで人生が変わった
日経DUAL編集部(以下、――) 30歳を前にFPを辞めてオーストラリアに行きました。このときはどんなことをされたんですか?
中村芳子さん(以下、敬称略) オーストラリアでは友人や、そのまた友人の家に泊めてもらって3つの州の3つの場所で過ごしました。語学学校に通ったときもあったのですが、基本的にはホームステイをしながら、海外での暮らしを見て、体験してみようと思ったんです。
―― このときに人生観が変わったということですが、具体的にはどういうことですか?
中村 日本でオーストラリアに住むメキシコ人の女性と知り合ったのですが、「いつかオーストラリアに来たら泊まってね」と言ってくれたので訪ねて行ったんです。このときに彼女と深く語り合い、生活や夫婦の関係を見させてもらって、結婚への価値観が変わりました。
―― 幼いころからの「結婚はしたくない」という強い気持ちが変わるほどの経験があった、と。
中村 そうなんです。このとき生まれて初めて、自分も家庭を持ってみたい、と思ったんです。
「結婚しても母になっても、何かを諦めたことなど一度もない」 友人の言葉に感化
―― それは、180度の方向転換ですね! ずっと結婚願望がなかったのに、急に家庭を持ちたいと思ったのはなぜですか?
中村 そのメキシコ人の女性がすごく素敵な人で。ダンサーだったんですが、そのときは失業中だったんですよ。家でのんびりお話ししていたときに、「私は結婚はしたくないけど、母からは子どもは産んだほうがいいって言われてる」ってことを話したんです。するとその人は、「子どもはどちらでもいいけど、結婚は一回してみるといいよ、面白いから」って答えたんですよね。全然違うバックグラウンドの人と生活を共にするのは面白いって。
―― 日本ではなかなか聞けない視点です。
中村 さらにね、彼女はメキシコの大学で出会ったオーストラリア人の彼と学生結婚をしていて、若くして子どもを三人産んでいたけれど、「結婚して子どもを持っても、何一つ自分のやりたいことを諦めたことがない」ってきっぱり言ったんです。
―― わぁ、それは心強いメッセージですね。
中村 何それ!って衝撃でした。彼女は失業中だったし、スーパーウーマンじゃないですよ。でも、夫がバイオリンを弾くオーケストラに生まれたばかりの赤ちゃんを連れて行ったり、年に一回一カ月、子どもたちを夫に任せてメキシコに里帰りしていたり、本当に自由に人生を楽しんでいたんです。
―― パートナーも協力的だったんですね。
中村 夕方6時には帰って毎晩家族でご飯を食べてくつろいで。こんな暮らしがあるんだって衝撃でした。15歳のお姉ちゃんがデートのことでお父さんに相談して、帰宅後なぜか泣きながら慰めてもらっていたり。すごいなって思いましたね。
―― ご自身の育ってきた環境とのギャップに驚かれたんですね。
中村 こんな家庭を持ちたいと思いました。それにオーストラリアでは、多くの人が家族を大切にしていて、人生を楽しんでいる感じがあったんです。贅沢ではなくても毎日、毎週楽しみがあって、家族や友人との時間を大切にしていて。こんな生活もある。私も生きることを楽しみたい、と思いました。