こんにちは。旅行ジャーナリストの村田和子です。この夏は親子で本気モードの「宝探し」はいかが? わが家は、ゴールデンウィークにあるテーマパーク内で挑戦したのですが、「宝探しなんて……」と斜に構えていた思春期の息子も、いい年齢の夫も、「宝の地図」を手にすると目を輝かせ夢中に。家族で作戦会議をして役割を分担、自分だけでは考えつかない仲間の発想をリスペクトし、力をあわせて宝を見つける。短時間の体験ですが、提唱する旅育メソッドの要素もしっかり網羅。子どもの自信や達成感が得られるばかりか、家族の絆も深まるのを実感しました。

 今回の「裏側探検隊」は、この「宝探し」を事業として展開している株式会社タカラッシュ代表取締役社長の齊藤多可志さん、広報担当の落合雄太さんに、「宝探し」への思いや家族で楽しむヒントを聞きました。

団体旅行のイベントコンテンツとして発案。最初は「大人」がターゲット

 大手旅行会社に勤務し、法人営業を担当されていたという齊藤さん。宝探しを発案したきっかけは、お客様からの要望だったといいます。

 「全世界から従業員が集まる宿泊研修を担当していたのですが、何かコミュニケーションが深まるイベントを考えてほしいというオーダーがありました。その時に頭に浮かんだのが、私の小学生時代の原体験だったのです」(齊藤さん)

株式会社タカラッシュ代表取締役社長の齊藤多可志さん
株式会社タカラッシュ代表取締役社長の齊藤多可志さん

 今のようにインターネットやテレビゲームもない小学生のころ、齊藤さんは自らストーリーを考え地図を作り、「宝探し」を遊びとして友達に提供していたといいます。

 「考えて作り出すのも好きでしたし、何よりも皆が楽しんでいる様子をみたり、『齊藤くん、すごいなあ』と認めてくれるのが嬉しかったですね。仕事でイベントの話があった時には、真っ先に『大人版の宝探し』が頭に浮かびました」

 かくして出来上がった「宝探し」は、ヒントを手掛かりにマイクロフィルムを見つけ出すというスパイもの。挑戦者が本気で頑張っても、2~3割だけがクリアできるレベルを想定し、難易度をかなり上げたといいます。

 「2時間半の制限時間でしたが、最初にクリアしたチームのタイムは2時間10分と、ほぼ想定通り。探すのが小さなマイクロフィルムですから各々が本気を出し協力しないと、宝にはたどり着けません。大人同士が必死に作戦を立てて歩き回り、偽物を見つけ一喜一憂する姿などは印象的でした。初対面でぎこちなかったチームの雰囲気も、宝探しが終わる頃には、自然と一体感が芽生えていたのも大きな発見でした」(齊藤さん)

 「あそこがいけなかったのか」「もう少しだったのに」など、参加者自らが振り返りを始め、コミュニケーションも活発になったといいます。クライアントの担当者も喜び、大成功。意外にも、最初は純粋にイベントとして発案されたそうで、やってみたら、チームビルディングにもいいと気づかれたとか。現在は研修等で活用されることも多いといいます。

 手応えを感じた齊藤さんは、継続して宝探しのプログラムを提供すべく、2001年4月、30才で独立。最初の一歩となった旅行会社時代のプログラムは、進化を遂げながら現在もメニューとして残っているといいます。

研修としてのニーズも多い
研修としてのニーズも多い