ベストセラー『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』(リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット著)などによって、現在の30代、40代にとって「人生100年」が現実味を帯びてきました。

今、私たちは「65歳で引退して15年~20年の余生を過ごす」を前提として人生計画やマネープランを考えています。引退後の人生が、30~40年と大幅に延びるのなら、それに合わせて人生計画やマネープランを変えていかなければなりません。どう意識改革すればいいのか――今だから間に合う、「100年ライフに備える共働き家計」を5回にわたり掲載します。

 第1回は、もしDUAL世代が人生80年のペースで100年ライフに突入したらどうなるのか、FP(ファイナンシャル・プランナー)で4人のお子さんを育てた内藤眞弓さんに聞きました。辛口のライフプラン表で「ショック」を共有しましょう。大丈夫、私たちには時間があるので、今からなら解決できます!

【100年ライフに備える共働き家計 特集】
第1回 世帯年収800万円でも89歳で赤字に転落? ←今回はココ!
第2回 パート転換、学費のかけすぎで老後破綻を招く?
第3回 30~40代は仕事も老後資金も「飛ばしすぎるな」
第4回 高収入こそ注意 100年ライフへの貯蓄体質づくり
第5回 「ダブルインカム×長寿」を生かした人生計画を

「典型デュアラー」は89歳でマイナス資産に

<span style="font-weight: bold;">内藤眞弓</span>(ないとう・まゆみ) 生保会社を経てFP(ファイナンシャル・プランナー)として独立。個人の相談業務、執筆、セミナーの講師としても活動中。
内藤眞弓(ないとう・まゆみ) 生保会社を経てFP(ファイナンシャル・プランナー)として独立。個人の相談業務、執筆、セミナーの講師としても活動中。

日経DUAL編集部 私たちの寿命は「80代くらい?」と考えてしまいがちですが、医学の進歩などとともに平均寿命が延びることを前提とした「コーホート平均寿命」によれば、私たち30代、40代にとって「人生100年」が現実になるかもしれません。

 DUAL読者の多くはダブルインカムで、今の世帯収入は高くても、支出が多い家庭でもあります。80代で人生が終わるつもりで計画して、100歳まで生きたらどうなるのか心配になります。

内藤眞弓さん(以下、敬称略) 過去の特集に登場した「典型デュアラー※」が、夫婦ともに100歳まで生きた場合のライフプラン表を作成してみました。

※「典型デュアラー」は夫婦同い年。36歳時の世帯年収が800万円(夫500万円・手取り400万円、妻300万円・手取り250万円で世帯の手取り収入が650万円)。年間支出が552万円で、子どもが2人いる世帯(妻は32歳と35歳のときに出産)。

単位:縦軸は万円、横軸は年齢
単位:縦軸は万円、横軸は年齢

注)
・保育料は都内の水準を参考に、2019年までは月額6万円とし、2020年以降は2人目割引はなくなるが、年齢が上がることを考慮して月額2万5000円とした。http://benesse.jp/kosodate/201601/20160120-1.html(ベネッセ調べ)
・幼稚園私立、小・中・高公立は学校教育費+学校給食費。高校は授業料無償であるが、世帯年収額の上限があり、水準が低くなることも考えられることから、負担があるものとしている(『平成26年度子供の学習費調査』文部科学省のデータより)。大学は私立として試算(『私立大学等の平成26年度入学者に係る学生納付金等調査結果について』より)。
・第1子・第2子独立年から生活費を300万円に減らしている。

前提としたのは下記記事の「典型デュアラー」
/atcl/dual/pwr/071/22/&page=1
※ 図版の試算の前提は以下の通り
1. 夫婦ともに36歳(子4歳、1歳)スタート
2. 夫のみ50歳まで毎年1%ずつ昇給を見込む
3. 35歳で4500万円のマンションを購入し、3700万円の35年ローンを組む(実家から300万円の支援あり)
4. 子どもの進学は高校まで公立で大学が私立文系を想定
5. 生活費は25万円/月(医療費・保険料含む)、インフレや子どもの成長に対する支出増を見込んで年に1%ずつ上げている
6. 受け取る年金は、夫(15万円/月)、妻(11万円/月)を65歳からとする。夫は60歳までは通常勤務とし、65歳まで嘱託で働く。妻は60歳で退職すると仮定
7. 退職金は夫(1200万円)、妻(500万円)を想定
8. 36歳時点の貯蓄額は300万円(住宅購入直後のため)
9. 上の子どもが29歳、下の子どもは26歳で親元から独立。(その分、親世帯の生活費は年間80万円削減される)

―― これは……。あくまでも「仮定の話」といっても、89歳以降が恐ろしいことになっています。

内藤 作成していて、私も衝撃を受けました。このシミュレーションでは「生活費」「その他の支出」の上昇率を年1%にしていますから、数字を変えればもっと緩やかにはなります。でも、私も4人の子育ての経験がありますが、子の成長とともに、家計は膨張しがちになるので。

―― はい、いいと思います。ダブルインカムで「このままでいいよね~」という読者に、目覚めてもらうのが目的ですから。ものすごく覚醒してしまいましたが(笑)。

≪次ページからの内容≫
・デュアラーは子育ての年齢が遅くなっている
・教育費がかかる時期と収入のピークのズレ
・「子どものため…」と安易に正社員を手放さない
・退職金がいくらもらえるか知っていますか
・人生の三大支出は「教育、住宅、老後」
・4人の子育てをした内藤さん流、息長く働くコツ