【結論】 教育費貧乏な家庭の末路は?
 “高齢破産”の可能性大。至急、教育計画の見直しを

【解説】
 インタビューに登場する教育費過多のセレブ家庭の話を読み、「なぜ、そこまでするのだろう」と不思議に思った人も多いのではないでしょうか。

 ご主人は外資系企業の社員で年収1000万円、奥さんも元外資系にお勤めで、聡明なご夫婦に見受けられます。おそらくITスキルも高く、エクセルを使って、現在の出費と収入の状況から、将来の資産状況を推計することなど朝飯前のはず。

 終身雇用・年功序列の崩壊などで今後、自分たちの収入が伸びにくい日本経済の現実も理解されているでしょう。にもかかわらず、無謀な教育投資で“高齢破産”に突き進んでいるのは、なぜなのか。

 本当に娘さんのことを考えるなら、「自分たちが将来破産してもいいから、子供をグローバル人材に育てよう」という選択などあり得ないはずです。破産した年老いた親を日本に着の身着のままで放置して、グローバルで大活躍することなどできるはずはないのですから。

 子育てに熱心なあまり、周りの状況がよく見えなくなっている。そんな家庭は、ここへ来て、全国的にも増えているようです。

 例えば部活動の過熱化が、各地で進んでいます。文部科学省は、中学で週2日以上、高校で週1日以上を目安にした休養日を設定し、教員の負担も軽減するよう各校に求めていますが、抵抗しているのは、教師でも生徒でもなく、“子供にスポーツエリートになるよう夢を託した親たち”なのだそうです。

子供の安全を犠牲にして“平等”を求める親

 さらに、こうした「子育てに熱心すぎる人々」は、往々にして我が子が競争で負けたり、傷ついたりすることを受け入れられません。そんな親たちの圧力を背景に、全国の教育現場で蔓延しているのが「過剰な平等主義」です。「徒競走ではゴール前で全員が手をつないでゴールイン」「学芸会では全員が主役の桃太郎」……。ゆとり教育の導入に伴う教育現場の極端な平等主義はかねてから指摘されていましたが、最近の“病状”はさらに進んでいるようです。

 例えば、皆さんは多数のけが人を出しながら、全国の学校で組み体操(ピラミッド)がどんどん高層化している本当の理由をご存知ですか。学校関係者に聞けば、「生徒の達成感を高めるため」「協調性を育むため」といった答えが返ってきますが、専門家は「平等化への配慮がある」と指摘します。

 ピラミッドが低ければ参加人数は限られます。校庭に大量のピラミッドを作るわけにはいきませんから、余った生徒は「扇」などの引き立て役に回らざるを得ません。これを一部の親たちが容認しないのです。問題を解決するには、子供の安全を犠牲にしてピラミッドを高層化していく(大量の人数がピラミッドに参加できるようにする)以外にありません。

 子育てに熱心なこと自体は結構なことですが、度が過ぎるとなれば話は別、というわけです。

 「教育費貧乏な家庭」に話を戻せば、本当に子供の将来を考えるなら、親の“高齢破産”で子供に迷惑をかけないためにも教育計画の見直しが必要です。親が子供ときちんと向き合い、人生に大切なものをしっかり教えれば、教育に大金をかけなくても、子供は立派に育つ。まさに小屋さんの言う通りだと思います。

(イラスト/大嶋奈都子)

「宝くじで1億円当たった人の末路」

 著者:鈴木信行
 出版社:日経BP社
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