「公立でもいいよね」と子供に言えない理由

―― 子供をいじめに遭わせたくないから公立ではなく私立に通わせたいという親も多いと聞きます。

小屋: とりわけ中学までを比較した場合、公立と私立の大きな違いは、私立はその教育方針に従わない“危険分子”を退学という形で排除することができるが、公立は義務教育であるためにそれができないという点です。

―― クラスの中に手が付けられない問題児がいた場合、私立は予防策が打てるが、公立は事が起きるまで抱え込むしかない事態に陥る可能性がある、と。

小屋: 私立に行けば子供が立派になる、いじめに遭わずに済む、というのは安易な考えだとは思います。でも子供の教育のためと考えて、できれば私立に通わせたいと思う親御さんの気持ちも、また理解はできます。

―― うーん、だとすれば、子供に高額の教育プランを組みたいが、そのままでは己が老後、路頭に迷いかねない親たちはどうすればいいのでしょう。

小屋: 「教育費がかさんでしまって、自分たちの老後の資金が足りなくなるかもしれない」。そんな家庭が打てる手は大別すると、3つしかありません。1つは、転職などで現在の収入を上げる、もう1つが運用によって資産を増やす、最後が教育プランなどを見直して支出水準を下げる、です。

―― 収入増加や資産運用に比べれば、最後の支出見直しが最も確実な手に思えます。が、例えば、小学校までを私立で過ごした子が、急に地元の中学へ通うとなると、カルチャーショックを受けてしまう恐れはありませんか。

小屋: もしも、お金の問題で子供の進路を変更せざるを得ない場合には、なるべく早い時期の方がいいし、子供に対して選択肢を提示してあげるべきです。そして必ず子供の同意を得て実行すべきです。

 家計の実態を正直に話して、子供に現実を理解させ、その上で奨学金の貸与を受けて、将来自分で返済する方法や、あるいは子供がアルバイトをしてでも今の進路を続けたいと言えば、そのような手段を支持してあげるべきです。

 大学の費用を子供自身に負担させてもいい。現実に、日本でも奨学金をもらっている学生の比率は、既に大学の学部生でも50%を超えています。半額でも自分で学費を負担するようになれば、多くの学生が今よりずっと真剣に大学での勉強に取り組むようにもなるでしょう。

―― なるほど。